「ナマエ、おいで」
ソファからシャルが手招きするので呼ばれるままに近づくと、きつく両腕でからめとられてバランスを崩し彼の足の間に膝をつくはめになった。
「わっ、ちょ、シャル…」
「んー?」
思わず非難めいた声を出す。けれどわたしの文句など彼は知らん顔でギュウギュウ抱きしめてくる。
「なに、どうしたの」
「んー、……足りなくて」
何がと聞こうとしてやめた。こういうとき、胸やけするような甘い言葉をうんと用意してからめとろうと待ち構えているシャルナークを、知らないわたしじゃない。
「聞かないの?何が足りないか」
「…聞きたくない」
「えー、聞いてよ」
「やだ。絶対変なことに持ち込むじゃん」
「変なことって?こういうの?」
「どこさわってんの」
「………だめ?」
上目遣いはひきょうだ。シャルナークはひきょうだ。腰に手を回して擦り寄って、どう甘えたらわたしがおちるか知っていてやっている。
「あざといなぁ」
「でも好きだろ?」
自信たっぷりな眼で、かわいく扇情的に見上げられたらもう白旗を上げるしかない。
161104
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