ナマエが俺に電話してくるときは、たいてい何か困りごとがあって、その相談。たぶん今回も。

「ーーもしもし、ナマエ?」
「…あ、シャル。…おつかれさま」
「うん。何、どうしたの?」
「今シャルのマンションの下にいて、」
「ふうん。………え?」
「…その、上に行ってもいい?」
「は?え、なんで」
「……えっと、前にみんなとお邪魔したから場所覚えてて、」
「いや、そういう意味じゃなくて、ーー何があったの?」

本題に切り込むと、とたんに携帯の向こうは静かになって、それからスンっと鼻をすする音が聞こえてきた。泣いてる。

「……その、…クロロとケンカして…はなし聞いてほしい。…迷惑じゃなければ」
「…またケンカしたの。べつに今ひとりだからまあ俺はいいけど、あのさ、たぶんクロロは」
「いいの?本当に?ありがとうシャル」
「聞けよ」
 
食い気味に反応してみせるナマエに、最後まで聞けよと俺はあきれる。
きっとクロロはよく思わない。ひとりで俺の家に上がったりしたら。
そう言ってやるべきなのは分かってる。
だけど、まるでどん底から引き上げられでもしたかのように安心した声になるナマエを、突き放すことなんて俺にはとてもできなかった。

「いつもありがとう。やさしくしてくれて」

そんなんじゃない。俺は、ナマエがクロロとケンカするたびこっちに頼ってくるのを喜々として、そして虎視眈々とさらう機会を狙ってるような奴だ。だからそんな安心したような声出すなよ。俺の家になんか来るな。ただで帰す自信なんてない。
16/05/02

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