「ねえキルア、それなに?」
彼が持っているのは4cm四方の固形物。ミルクティーのような色をした。
「知らねえの?キャラメルだよ」
答えるや否やキルアはそれを口の中に放り込んでモゴモゴやった。生まれて初めてそれを見たわたしは興味津々でのぞきこむ。
「おいしい?」
「超〜〜うまい」
キルアは味わうように目を閉じて言った。そう言われると是が非でも食べてみたくなる。
「ええ、私にもちょうだい!」
「んー、どうすっかなー」
考え込むようにして片目を開けたキルアの口元からは、甘いにおいがただよってくる。
「えええ意地悪しないでちょうだいよ〜。お願いお願い、ひとつだけでいいから」
「んーーー〜、そこまで言うなら仕方ねえな」
キルアはたっぷり間を置いてから、ひどくもったいぶった調子でズボンのポケットをさぐった。そこから出てきたのは白い包み紙におおわれた、たぶんキャラメル。心なしかキラキラ輝いて見える。それを手のひらに乗せて、わたしをちらりと見上げてくるキルア。
「くれるの?わーい」
喜んで伸ばした手は空振りして宙をかいた。
「あれ?」
「まだな」
キルアは首をかしげるわたしを無視して包み紙を剥ぐと、その白い指でキャラメルをつまんでわたしの口元に差し出した。……え?
一瞬の動揺。それをキルアはめざとく見抜いて「ほら口開けよ」とサディスティックに笑った。
16/06/07
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