「くしゅん!」
くしゃみと一緒に鼻水も少しだけ出てしまう。
さすがに汚いので服の袖で鼻を隠しながら、ポケットを探ってティッシュを出した。
鼻をかんでいると、アミちゃんが心配そうに私を見てくる。
「ユイ。風邪?」
「う、うーん…。そうかもしれない。
家と学校だと温度差がすごいから」
「そういえば、ユイの家っていつも冷房つけてるんだっけ?
あ、俺のティッシュ使ってよ」
「ありがとー。バン君。
うん。
パソコンいっぱい使うから、つけとかないとオーバーヒートしちゃうとかなんとか」
ずるずると絶え間なく鼻水が垂れてくるのをかんでいると、バン君が自分のティッシュをくれる。
私はそれを有り難く受け取って、鼻をかんだ。
「電気代やばそうだな。それ」
「どうだろう。私、料金とかあんまり見ないから…引き落としだし」
でも、電気代掛かってるだろうなあ。
自分の家の寒さを思い出しながら、なんとなく心配してみる。
その前に私とお父さんの健康の方がやばそうだなあとは思った。
「いざってなったら、ちゃんとお父さんに言って冷房切ってもらいなさいよ」
「うん。
でも、お父さんの研究が進むのは良いことだから。
ついつい言えないんだよ」
「鼻水垂らしながら言うな」
「うう。ごめんなさい。
あ、でも、家の中ではあったかい格好してるから…問題は温度差なのです。
それに寒いのだってそれなりに利点があるんだよ。
食べ物腐らないし、冷めるの早いけど…」
「それは…利点、なのかな?」
「…多分」
バン君の疑問符に私もさすがに、あれ? と思わなくもなかった。
が、頑張れ、私。
寒いのは耐えればどうにかなる。どうにかなる。
「寒いのは大丈夫。寒いのは大丈夫」
「ユイ。声に出てる。出てる」
「うえっ?」
アミちゃんに指摘され、私は自分の口を手で塞いだ。
そうすると、アミちゃんたちは笑う。
うう…、恥ずかしい。
「お父さんの研究、早く終わらないかなあ」
私が思っていたよりも、重い響きになってしまう。
家では言えないけど、文句が口をついて出た。
お父さんは研究命な人なので、言ったら私たち親子の関係は危うくなること間違いなしだろう。
それでも文句を言わずにはいれなかった。
私と話してくれないし、ごはんは食べてくれないし…。
「そうね。
早く終わるといいわね」
「うん。
……くしゅん!」
ちょっとだけしんみりしちゃったなあ、と私が珍しくアンニュイになったところで、またくしゃみが出た。
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