04.青い瞳の少女 (5/76)



黄金のLBX・エジプトを再起不能なまでになぶり壊したアキレスのVモードの威力は凄まじかった。

容赦のない攻撃。
今までのダメージの恨みだとばかりに振るわれる拳はまさに凶器にして狂気。

それは観察していた多くの大人たちを驚かせた。
なによりプレイヤーであるはずの山野バンですら驚いたのだから、大人たちの反応も当然と言える。
そんな中、大人たちや山野バンたちからも遠く離れた場所で双眼鏡とLBXで観察していた少女は、満足げに呟いた。

「あれなら時間を掛ければ、どうにか対処は出来るわね」

海のように青い瞳を思慮深げに光らせながら、今度は「CPUが…」「フレームが…」「おそらくこういう開発構想で…」とブツブツと小難しいことを呟きだす。

片手には双眼鏡を、片手は顎に当て思案顔。

さながら不審者のようではあるが、幸い周囲には誰もいないので、その呟きが実は高度なLBX理論だということももちろん誰にも分からなかった。

「うん。大体わかった。上出来、上出来」

彼女はCCMを操作し、周囲の防犯カメラの映像をハッキングで少々拝借。
ついでに同じようにLBXを通して、CCMで撮影していた映像がしっかりと撮れていることも確認した。

「千里の道も一歩から…ってね」

ポチポチとCCMのボタンを押すと、エメラルドグリーンにカラーリングされたLBXを回収した。
そして大事大事と言いながら、映像に厳重なロックをかけた後CCMを閉じる。
意気揚々とばかりに歩きだし、実は100円で購入した双眼鏡は燃えないゴミ箱にスローイン。
綺麗な放物線を描いた双眼鏡はゴミ箱に収まった。

「お、ラッキー」

少女は思わずガッツポーズした。


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