03.私が絶対見つけてみせるから (4/76)


それは私の周囲が平和極まりなく、かの転校生・海道ジンが戦闘機で登校というとんでもないことを起こす少し前の話。
実際にはこれからの出来事の序章がすでに始まっていて、私が気づかないだけの話だったのだけれど。

■■■

「カズ君? 彼なら先に帰ったよ」

教室の扉の前でバン君とアミちゃんにカズ君について聞かれた私はそう答えた。
私の答えを聞いて、二人は怪訝そうに顔を合わせた。
そういえば、この3人が一緒じゃないのは珍しいなと思った。
休み時間もほぼ一緒、キタジマで3人でLBXバトルをするのをよく目にしているので余計にそう思う。
ちなみに私がキタジマに行くときはいつも一人である。けして友達がいないわけではない、ということは理解していただきたい。
彼ら3人とは小学校からの付き合いだし、キタジマでも時々バトルをする。
三人同士ほどではないけど、彼らを理解しているつもりの私はケンカとかしたのかなと思って、お節介と知りつつも聞いていみた。

「何かあったの?」

「ええ。ちょっとね。ほら、ユイも聞いてない?
ミソラ二中の番長の話」

「あ、それなら聞いてるよ。
確か、2組のリュウ君が郷田先輩を倒したって…もしかして、倒したのってカズ君?」

「いや、倒したのは俺達なんだけど…あの戦いでカズのLBXが…!」

思い出したのか、拳を強く握るバン君。
アミちゃんをちらりと横目で見ると、同じように悔しそうな顔をしている。
事情はいまいちわからないけど、これはケンカより難しい問題かもと直感し、考えるより先に口が動いた。

「カズ君、探しに行こうよ! 大丈夫! 私が絶対見つけてみせるから!」

■■■

「で? 大口叩いたはいいものの、結局見つけられなかったわけか。相変わらず、アンタの人助けは質が悪いね。ユイ」

「面目ないです。…本当にごめんなさい!」

沙希さんの指摘は最もであり、私はもう二人に平謝りするぐらいしか出来ることがない。
結局カズ君は見つからず、たどり着いたキタジマでバン君はやっと手にいれたという念願の専用機・アキレスのメンテナンス。
アミちゃんは丁度いいわ、ということで私のLBX・クイーンのメンテナンスをしてもらっている。
なんだか余計に申し訳なくて、下げた頭を上げられない。

「ユイが気にすることないわよ。見つからないカズの方が悪いんだから」

そう言って慰めてくれるアミちゃんはまるで天使のようである。油断すると感動のあまり涙が出そうになるので、涙腺を気合いで引き締めた。

「はい。メンテナンス終了。相変わらず、ユイのカスタマイズは勉強になるわ」

「ホント、ユイはカスタマイズとメンテナンスの腕だけは一流よね」

「いやあ、それほどでも…」

沙希さんが褒めてくれるのなんて、私のカスタマイズとメンテナンスぐらいなものである。
素直に嬉しがっていると、まさかのアミちゃんから痛恨の一言。

「あとはバトルそのものね。さあ、私のクノイチと勝負よ!」

「俺のアキレスとも勝負だ! ユイ!」

「うえっ!? せめて1対1でお願いします〜!」

私の必死の言葉を受け取ってくれたのか、どうにか1対1になったものの負けたのは言うまでもないと思う…。

■■■


キタジマを出た後その店の前で、私は固く握りしめた拳を天高く突き上げると、高らかに宣言した。

「明日は絶対、何があってもカズ君を捕まえます! 何をしてでも!」

「き、気持ちは嬉しいけど、暴力は駄目よ。ユイ」

そう引きつったような笑みで言うアミちゃんに「うん!」と元気よく答えてから、アミちゃんとバン君と別れる。

「じゃあね! また明日!」

大きく手を振る。
明日はカズ君を教室で引き止めるためにどんな話題を振ろうかなあ。なんて考えながら、私は慣れた帰り道を歩く。
この後に起こった事件を知る由もなく。



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