14.予感 (15/76)


システムエラー。

つまりはLBXの内部CPUがプレイヤーの操作速度に追いつけなかったということ。
プレイヤーの操作技術の高さを表すと同時に、そのプレイヤー自身の負けを意味する。

操作能力に対する名誉とバトルに負けるという屈辱。

ジン君はどちらの比率が大きかったのだろう。

バトル結果を聞き、私はバン君が無事勝ったことにほっとしつつ、ジン君のことを考えた。
『アングラビシダス』で話した彼、どうにも歯切れが悪かったような…。

再び『Blue Cats』でバン君たち、それから宇崎さん、レックスそれから私が集まり…ジン君が言っていたポイントを調べていた。

「アミちゃーん。応援出来なくてごめんなさい〜」

「気にしなくていいのよ。
それよりもユイが仲間になってくれて、私とっても嬉しいわ!
これからもよろしくね」

「うん! 微力ながらお手伝いします!」

「お前が俺たちの仲間か! よろしくな、ユイ」

「うん。あ、それから優勝おめでとう! バン君」

「ああ、ありがとう。ユイ」

「というか、ユイは何を手伝うんだ?」

「うっ。痛いところを突かないで! カズ君」

そんな会話をしていた矢先、私の予感は的中することになる。

山野博士…バン君のお父さんは海道邸、つまり海道ジン君のお祖父さんに囚われているとのこと。

「なるほど…。孫かあ」

「ん? 何か言った? ユイ」

「ううん。なんでもない」

孫ならなんとなく納得。
私の勘もなかなかバカにならないなあ、と一人…私はもしかしたら本当にバン君たちの役に立てるかもしれないと思った。

それから、繁々と海道邸の空撮写真を見る。
この屋敷、セキュリティどうなってるんだろうかと考える。
檜山さんに無駄にセキュリティを強化させられたせいか、こういうところが妙に気になる。
我ながら『一般的な中学生』とは思考回路がかけ離れている気がした。

「この屋敷の警備員の数、馬鹿になりませんよね。
山野博士を助け出すのはいいとして、セキュリティはどうするんですか?」

私がそう質問すると、宇崎さんと檜山さんは苦虫を噛み潰したような顔をする。

この顔は現状では侵入する手段はないってことか…。
うーん…でも私も思いつかないなあ。
ここにカメラ置いてとか、ここは人感センサーとかそんなことは思いつくのに…。

「っ! 早く父さんを助けに行きましょう。拓也さん!」

「いや、海道義光は政府の要人。
ユイの言ったようにセキュリティは厳重だ。
助け出すのはかなり難しいな…」

檜山さんがそう答える。
私も思わず頷いてしまいそうになって、慌てて止めた。
さすがに空気が読めなさ過ぎる。

「どうすればいいんだ…」

バン君の必死の提案は最もであり、私だって助けたいけど…危険と分かっていて敵の元に行くわけにはいかない。

「せっかく居場所がわかったのに…!」

バン君の苦悩の声が耳の中で木霊する中、

「手伝わせてもらえないかしら?」

突然扉の方から声がする。
『Close』にしていたはずなんだけど…と振り向くと、長い髪の眼鏡が理知的な女性がいた。インテリ系美人って感じで、ちょっと見惚れてしまった。

「里奈…」

「海道邸のデータなら、ここにあるわ」

その人は黒い機能美のするメモリを取り出す。
宇崎さんの反応からして、知り合いみたいだけど…なんで海道邸のデータなんて持っているんだろう。

私はちらりと檜山さんを見る。
たまたま目が合って、檜山さんが頷いてきたので思わず頷き返した…意味は分からないけど。

それでも彼の目にはいつもとは違う光が宿っているのは分かる。

うーん、嫌な予感がする。



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