12.二度目の邂逅 (13/76)


眼下ではジョーカーとアキレスのバトルが始まっている。

ジョーカーの素早い動き…そして分身攻撃という、実際には3体同時に操作しているというトリックにアキレスは押されている。

「こんなものなのか?」

彼のバトルを見ながら、僕は嘆息した。

彼の実力はこんなものなのか。
確かにバン君のLBX操作技術は常人より上だが、ジョーカーに苦戦していては話にならない。
あのジョーカーは手強いが、対抗策はある。
それがわからないようでは……

「…気づいて、バン君。
この地形とアキレスのVモード、ハカイオーの腕なら、対抗策はある…」

隣の…いや、若干遠いか。
とにかく隣の少女がそう呟いて、僕は思わず彼女を見た。

白い大きな帽子に、青が効果的に使われたセーラー服姿。
廊下ですれ違ったことがある、バン君たちと一緒にいた少女だ。

彼女のパソコンにはバン君の試合、それからリアルタイムで映像をネットに流しているのだろうその画面が映し出されている。

彼女の言っていることは正しい。
僕の対抗策とは違うが、改めて地形を観察すれば…彼女の言う通り対抗策はある。
そしてアキレスのVモード、それに加えてあのパーツ交換が功を奏する可能性は高い。

「…悪くないな」

その着眼点は悪くない。

バン君も気づいたのか、ジョーカーを誘い出し、行き止まりまで相手をおびき出した。
ジョーカー3体が同時にジャンプする。
しかし、おびき出されたその狭い場所では…

「今!」

隣の彼女が叫ぶ。

アキレスがジャンプしたジョーカーの真下に入る。
そう。そこがこの地形の利点を活用したジョーカーの対抗策。

『アタックファンクション ライトニングランス』

一直線の必殺ファンクションが同時にジョーカーを貫く。
ハカイオーの腕のおかげでその威力も上がっている。
むしろあの腕がなければ、3体のジョーカーを同時には貫けなかった。

「よし!」

拳を握る。
自分のことのように喜ぶ彼女は本当に嬉しそうだった。
それから彼女は「あ…」と呟いて、こちらをちらりと見た。

「え…と…うるさくて、ごめんなさい」

「いや、気にしていない」

「そ、そっかあ。良かった」

彼女は僕が気にしていないことに安心したのか、パソコンを操作するとその画面を処理し、どんどんと画面を消していく。

すごいスピードだ。
もしもCCMも同じようなスピードで入力できたなら、彼女は相当なLBXプレイヤーになれるかもしれない。

彼女はパソコンの電源を切ると、それを手持ちの鞄にしまった。
代わりにCCMを取り出したが…、そういえば彼女はバトルに参加していないのか。

「君は…」

「ん?」

「君は『アングラビシダス』に参加しないのか?」

「あー、私は弱いから。
バトルは空っきしだから、『アングラビシダス』には参加しないんだ。
あ、でもひ…レックスとはちょっと知り合いだから、お手伝いしてるんだ」

ゆったりとした口調で彼女はそう言うが、なんとなく違和感があった。
砂を噛むような、ざらざらとした掴み切れない感触。

僕が違和感に何も言えずにいると、彼女は困惑したように首を傾げた。
CCMを確認して「あ!」と声を上げる。

「それじゃあね! ジン君。
バトル、頑張って!」

手を振るその姿にまた違和感がある…が、その正体がわからない。
わからないからこそ、気持ちが悪い。

「どうかいたしましたか? ジン様」

僕の様子に気が付いたのか、じいやが声を掛けてくれる。

「いや。なんでもない」

頭を振り、彼女のことを脳から除外する。
考えてはいけないと、誰かが叫んだ気がした。



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