11.ユイの考察 (12/76)


応援するのはいいけど、私はそれほど自由に応援出来るわけじゃない。

リアルタイムの映像をネットに流したり、戦績を書き込んだりと意外と忙しい。
「応援は任せなさい!」とは言ったけれど…今まではプログラムに任せていたことも今回は檜山さんが何故か一部パソコンの電源を落としているので、私がやることになった。

多分だけど、外部からの侵入…所謂ハッキングを警戒しているのかもしれない。

以前に比べてセキュリティ強化もさせられたし…なんなんだろう。

私は応援に来たリュウ君やミカちゃん、それからえーと…番長の郷田先輩と四天王さんとは離れた場所で持ち運び用のパソコンを立ち上げる。

具体的に言うと、海道ジン君から少し離れた、それでもギリギリ隣と認識できる場所で。

海道ジンという人物が少し気になったのだ。
妙にバン君たちが意識していたし、そのLBXも気になるところ。

私はパソコンを操作しながら、ちらちらと彼を盗み見る。

彼の隣には執事と思われる人物が付き従っていて、結構裕福な家の出身なのではないかと思う。
ん? そういえば、海道…海道…海道?

確か先進開発省大臣にそんな名前の人がいたような…。
でも海道って名前は珍しくはないし、そもそも海道大臣さんは結構なお歳で…子供がいるという話も聞いたことがない。
親戚とか? でも安易に決めつけるのは……宇崎さんの例は稀なわけだし…。

「うーん…」

小さく唸りながらも、気づかれないようにメインとは別のカメラを起動させる。

参考になるかはわからないけど、彼の姿を録画しておく。
LBXバトルにおいて相手の動きも重要だけど、プレイヤーの様子もよく見ておく必要があると私は考えている。
相手の一挙一動でそれが罠なのか、それとも本心なのかを見抜ける…まではいかないけど判断の材料にはなる。
今後の為にも、気は引けるけど録っておこう。

下ではすでにバトルが始まり、そしてバン君もバトルを始めている。
相手は『アングラビシダス』の出場経験も何度もある人物。
反則技も得意としていて、おそらく戦いにくい相手でもある。

「がんばって。バン君…」

私は小さくそう呟いた。


■■■


一回戦はバン君が勝利した。
右腕を破壊されてしまったけど、郷田…先輩やミカちゃん、リュウ君たちがバン君の元に行くのが見えたから大丈夫だろう。

私は各バトルの映像をネットに流し、それから…そおっと海道大臣さんの情報を調べる。

先進開発省大臣・海道義光。
善良なイメージが強く、国民からの支持も高い。
ニュースでも報道されていたけれど、現在総理大臣の財前総理とは政敵同士…。

「………」

子供がいるという情報はない…か。

隣にいたジン君は既にバトルを開始し、僅か数秒で相手を倒した。

そしてアミちゃん、カズ君も勝利。
私に気づいてアミちゃんが手を振ってくれたので、私も振り返した。
ちなみにカズ君も珍しく手を振り返してくれた。

「そういえば…」

ついでにと、私はバン君のお父さんについても調べてみる。

山野淳一郎。
LBXの生みの親。天才と言われた工学博士。
しかしながら、2045年つまり5年前に乗っていた飛行機が行方不明になり、彼も事故死したことになっている。

「うーん…関係ありそう?
でも確証がないんだよね…っと、檜山さんからメール?」

CCMではなくパソコンの方にメールが届く。

今後の細かい指示だった。事務的極まりない文章であり、相変わらずさを感じる。

「むう」

ちょっと不満であり、私はさっき自分で調べたことで考えた可能性についてを出来るだけ簡潔に (長いと読んでもらえない) 書き、送りつけた。

遠目からだけれど、微妙に檜山さんの表情が変わったのが見て取れた。

うん、いい気味だ。





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