そんなオビであるが、ここ数日考えて続けている事があった。
「……ユウ嬢、元気にしてるかなぁ」
それはユウの事である。
もう会う事も無いのだと改めて思うと何故だか「勿体無い」と考えてしまうのだ。
今まで、ゼンの従者になる前は人との出会い別れなんてものは当たり前の事であったし、それを惜しむ事なんてものも無かった。それなのに何故、ここまで惜しんでいるのだろうとオビ自身でさえ不思議に思っている。
『オビさん』
へらり、と顔の力が抜けた笑顔がオビの頭を離れる事は無い。
もう少し、ユウの笑顔が見れてたら。
もう少し、ユウに触れて要られたら。
「……何考えてるんだろう。変態臭いな」
馬鹿らしい、とオビは大きな溜め息を吐いた。今更何を考えた所でユウがこの城に戻ってくることは無いし、オビの前に現れる事も無いだろう。
女々しい思考回路になってしまうのは何故だろう、と考える事をオビは無意識の内に留めていた。
それを深く考えてしまうと、自分が何か大きな物に気付いてしまう様に思うのだ。
「……主の所にでも行くか」
よっこいせ、と言いながら足を上に1度高く上げると勢いを付けて地面へと振る。その反動を活かして立ち上がると大して汚れてない尻の部分を軽く叩き、屋根の上から降りたのだった。
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