カチャリ、と音を立てて戻って来たオビからユウは当然の様に水を受け取る。


「……に、しても。今日は久しぶりなのもあってかもしれないけどさ」
「その口を塞いでやろうか?」
「ユウ嬢のキスで?」


オビが先程までの感想を言う事を予想したのだろうユウは言い切られる前にそれを阻止する。それを気にしていないオビは反対の手で持っていた水の入ったコップを近場に置き、ユウの口に触れる数センチ前で顔を止める。
ユウから口付けされたいのだろう。それはもちろんユウにだって分かっている事で、たじろぐ事なくオビを見つめていた。


「恥ずかしい、から。言わないで」


ユウは少し頬を染めて告げると、軽くオビの口と自分の口をくっつける。しかし直ぐに放して落ちていた、正確には落とされた衣服を身に纏い始める。
オビはユウからされるとは思っておらず、顔を手で覆うと指の隙間から恨めしそうにユウを見つめていた。


「…………何?何なの?もう1回を所望してるの?」
「分かるでしょ」
「………………時間だね」
「うん。……全部終わったら、考えてあげる」
「……言ったな?」


オビも深い息を吐くと散らばっている服を集め始める。ユウはそんなオビに一瞬目配せするものの直ぐに自身の準備を始める。
恥ずかしかった。それは本音であった。
だけども、オビにその先を言わせてしまったら自分のはしたなさを再確認する様で嫌だったのである。オビが好きで、ずっと触れて居られなかったのが此処まで影響するとは、とユウは女の性欲を舐めきっていた事を後悔した。


「……ねぇ、ユウ嬢」
「何さ、オビ」


小さく笑いながらオビはユウに声を掛ける。オビは「それじゃ、失礼して」と一置きしてから、ユウを後ろから抱き締める。ユウもオビがした事を咎める事なくただ成されるままであった。


「お誕生日、おめでとう。バレてるならもう言っても良いよね」
「……ありがとう、オビ」


ユウは優しく回されている腕に触れる。この優しい手がさっきまで自分を求めていたのか、と何故か愛おしさを感じたのだ。
いつもは口が悪い。だけども、彼がくれる愛に偶には、本当に偶に、素直に答えても良いんじゃないかともユウは思うのだ。


「オビ」
「なぁに?」



「私、今、とっても幸せだよ」


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