「ちょっ、待って。…………待てって言ってるでしょ!!オビ!!」


ユウは慌ててオビから離れようと肩を押し返す。しかしオビは知らんぷりで肩に掛かった手を外しユウを抱き締めてくる。


「なぁに?ユウ嬢」
「〜っ!!だぁ!!!耳元で喋るな!!アホんだら!!」


顔を真っ赤にして耳元で囁く様に喋るオビの頭を怪我をしない程度に叩く。その小さな優しさがまたオビが付け上がる理由にもなるのだが、ユウはそれを知らない。
名残り惜しそうに耳元にふっ、と息を吐いてオビは体を起こす。息を吐かれて、少し眉を潜めたユウをオビは目敏く見ており、自然と口角が上がる。


「そんな食べられる前の兎みたいにぴくぴく震えても可愛いだけだよ?食べられちゃうよ?」
「誰も食べんわ!!良いから早く離せ!!……って!おい、こらっ!あ、まっ、ひぅっ」


ユウの背骨をなぞる様にしてオビはわざわざ起こした体をくっつけ直し指を這わせる。くすぐったかったのだろう、ユウは肩を竦め前にいるオビに体重を預けてしまう。


「あはは、も〜。駄目だって」
「あぁーーーーー!!!!!!!!我慢ならん!!!!!おい!!オビ!!ユウ!!此処を何処だと思ってるんだ!!!」


バン、と大きな音を立ててゼンが立ち上がった。そう、此処は執務室。まだ良かったのは、ゼンの他にミツヒデとキキしか居ない事だろう。
ミツヒデとキキは耳に詰め物をして仕事をしている。ユウはとても申し訳ない気分になるものの是非助けて欲しかった。


「ちょっと!ゼン!!何で私まで??被害者!!超被害者!!」
「知るか!!俺の前でいちゃいちゃしやがって!!」
「それじゃあ主ぃ〜。俺とユウ嬢は今日はお休み、って事で!」
「は?」
「行け行け!!俺の目の前から消えろ!!」
「え、いや、ちょ、意味か分からないよ!?」


ユウにとっては何だか意味が分からないまま気付いたら執務室から出されていた。背後で扉が閉まる音がする。……あれれ?とユウは首を傾げる。


「……ユウ嬢。2人っきりになったねぇ?」


いつの間にか肩を抱いていたオビがユウの耳元で囁く。ユウにとって耳は弱点であり、それを知ってからオビはちょくちょく耳元で囁く様になった。オビの声音に少しの熱を感じユウは身の危険を感じる。


「ゼ、ゼン!!!ごめんってば!!私悪くないけどごめんってば!!」
「知るか!!晩飯まで部屋にでも篭ってろ!!白雪に会いに行くのも駄目だっ!」
「何それ、理不尽!?」


慌てて向きを変えてドアを叩くものゼンからの理不尽な返しに手の勢いが一瞬止まると、その隙を逃さない様にオビに抱えられてしまった。向かう先はオビ、ユウ達の側近部屋がある方向。


「ユウ嬢。お許しも出た所だし、俺と待ってよっか」
「え、いや、ちょ、自分で歩けるわ!!」


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