話終わった炭治郎はごくり、と唾を飲み込んだ。
目の前のユウの匂いが納得した匂いをしていたからだ。


「……成る程ねぇ。義勇と錆兎にまさかの鱗滝さんまで。一瞬似てるとは思ってたけどまさか弟弟子だったとは」
「ねっ、禰豆子は人を食ったりしません!俺と一緒に戦えます!」
「…………ふぅん?」
「もし禰豆子が人を襲ったら!禰豆子を殺して俺も腹を切ります!だからっ、殺さないで下さい!」


何かを探るようにユウは炭治郎の目を見つめる。そして目は炭治郎を見たまま隣に居る善逸へと声をかけた。


「善逸、素直に答えて。炭治郎は嘘を吐いてる?」
「……吐いてません。禰豆子ちゃんは人を襲っていないし、炭治郎は本気で腹を切る気です」


よし分かった、とユウはふんわりと笑った。


「義勇と錆兎、それに鱗滝さんまでが君にかけている。だから私も君にかけよう。……但し、もし禰豆子が少しでも人を傷付けたら、義勇と錆兎と鱗滝さん、それにそれを知っている善逸と伊之助、その他の全員を私が殺す。いいね」
「なっ!他の人達は関係ありません!!」
「あるよ。鬼を殺す団体の中で鬼が生存している事を許しているんだから、何か問題があれば見逃した者の責任だ。……それとも君は自信がない?妹が人を襲わない自信が」
「あります!禰豆子は絶対に人を襲わない!」
「なら平気だろう?君が鬼を連れている事を私は見ないふりをしてあげる。……さ、これで話は終わり!悪いけど2人とも私を部屋まで連れてってくれる?」


2人の手を借りてユウはその場に立つ。少しの間じっと禰豆子を見つめて、左手をゆっくりと禰豆子へと伸ばす。
禰豆子は不思議そうに軽く首を傾げた。


「……いい子のままでいてね」


さらりと禰豆子の頭を撫でるとふぅ、と大きな息を吐いて部屋へと戻り始めた。
部屋へと2人の手を借りてたどり着くと、ゆっくりと布団の中へと入っていく。そうだ、と思い出したかの様に炭治郎を止めた。


「今回は私だったから良いけど、柱には絶対に見つかってはいけないよ。彼らはきっと見つけた瞬間に殺すから」
「……あ、ありがとう、ございます、ユウさん。ゆっくり休んで下さい」
「2人もありがとね。君達も怪我をしているんだから早く大人しく安静にしなさい」


ユウはそう言い残すとさっさと目を閉じた。
炭治郎や善逸はどうしてそんな怪我を負っていたのか気になってはいるが、今日はもう話す気は無いといった様子のユウに渋々部屋を後にしたのだった。







化け物だよ、と善逸は零した。


「いや〜ご飯が美味しいねぇ〜!」


目の前のユウは美味しそうにご飯を口にしている。絶対安静からたった数日、炭治郎達と同じ位まで回復をしていた。肋が折れてるのと腹を縫ってしかも腕も骨折してるのは同じ怪我の大きさなのだろうか、と善逸は異常さに冷や汗を流しているが、炭治郎は凄い凄いしか言ってない。


「ユウさん!俺達と会う前は何をしていたんですか?凄い大怪我でしたけど」
「別に大した事じゃないよ?珍しく鬼の団体がいるらしいっていう街に行って首切ってただけだし。まぁ数が多くて1匹逃しちゃったんだけどね」
「へー!凄いですね!!」


いや大した事だよ!!と声を大にして善逸は叫びたくなったが、きっと自分以外には伝わらないだろうと察し何も言わなかった。初日、騒いでた善逸と炭治郎にユウが向けた殺気に尻込みしているとも言う。


「おい女!俺様が勝負してやる!」
「女じゃありませ〜ん」
「なっ!?嘘つけ!お前は女だろ!」
「種類は人間の女だけど、そんな事いったらお婆さんも女だよ。私にはユウっていう識別言葉があるんです〜」
「ユウ!!」
「おっ、よく言えました〜!炭治郎と善逸はまだ言えないのに偉いねぇ」
「馬鹿にするな!!」


伊之助は所構わず頭突きをしていた炭治郎に無視され続けたのでユウへと標的を変えていた。ただ、ユウもまだ完全には完治していないのでのらりくらりと伊之助を躱している。そのうちすっとぼけそうでもあった。


「そういえば善逸、さっきはどこに行ってたんだ?」
「禰豆子ちゃんに合いそうな!花を!取ってきていました!」


炭治郎が思い出した様に聞くと善逸は急にへこへこしだして炭次郎へと笑顔を向ける。
そんな善逸の態度に炭治郎は少し不思議そうにしていた。


「……いやぁ、君達3人、本当に良いペアになりそうだねぇ」


食べ物を綺麗に平らげ、ユウは面白そうに笑ったのだった。

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