埋葬を終えて、山を下ることになったが善逸は正一を連れて行くとごねた。
ーーとてもごねた。


「正一くんは強いんだ!!正一くんに俺を守って貰うんだ!」
「正一くんは嫌がっているだろう!!」


烏の一声ならぬ、炭治郎の一声。炭治郎が善逸を殴って正一を引き離す。それでも諦めきれないのかぐすぐすと泣きながら正一へ近寄ろうとした。


「善逸、駄目だよ。君のそれを押し通すなら兄弟を引き離さないといけなくなるんだから。……君はそんな酷い事をする子では無いよね?」


ユウがとどめと言わんばかりににっこり笑うと、流石の善逸もまだ心残りそうではあるが正一へと詰め寄るのは止めたのだった。もちろんその後にユウが善逸を褒める様に頭を撫でると幸せそうに、にやにやと笑みを浮かべて炭治郎と伊之助へと良いだろうと自慢気に胸を張っている。


「カーくん、香り袋を出してくれる?」


ユウが自身の鎹鴉を呼ぶと、鴉が口から藤の花の香り袋を吐き出した。鴉の口から出たものをそのままユウは清へと渡す。清の顔は驚きで真っ青になっていた。


「あはは、汚く無いよ。カーくんは特殊な訓練受けてるからね。……君は稀血って聞いたからこれは常に持ち歩く事。鬼除けになるから。分かった?」
「は、はい。本当に色々ありがとうございました。家までは自分達で帰れます」
「分かった。気を付けてね」


ユウは鎹鴉達に近くの藤の家まで、と言うと鴉を連れてさっさと歩き出してしまう。少し歩いてぴたりと止まった。


「あれ?君達も来ないの?」


振り返って不思議そうに首を傾げる。炭治郎達はあわててユウの後へ続いた。







「カァアーーッ!休息!!休息!!負傷ニツキ完治スルマデ休息セヨ!!」


炭治郎の鎹鴉が大声で叫ぶ。炭治郎達が鎹鴉に連れられて来たのは藤の花の家紋の家だった。


「えっ?休んでいいのか?俺今回怪我したまま鬼と戦ったけど……」
「ケケケッ」
「ケケケッって……」
「ごめんください」


炭治郎が不思議そうに鎹鴉と会話し始めるがユウは勝手知った様にトントン、と扉を軽く叩く。すると少ししてギィィと古びた音が鳴って1人のお婆さんが出てくる。


「あっ、夜分に申し訳ありません!」
「お化けっ……お化けだ」
「善逸!」
「騒がしくしてすみません。お世話になっても良いですか?」
「鬼狩り様でございますね。どうぞ」


お婆さんは先導して4人を中へと招いた。女であるユウは別部屋を用意してくれて残りの3人は大部屋へと案内される。医者も呼んでくれており、3人は全員肋が折れていた。
もちろんご飯も用意してあったが、食堂へ3人が移動すると3人分しか無い。不思議に思い炭治郎がお婆さんへと問いかけると、


「あぁ、女性の鬼狩り様は重症で絶対安静なので既に休まれています」


善逸が口から食べ物を零すくらい驚いた返答が返ってきた。確かに思い返せばユウから血の匂いがしていたが重症であんなに元気だったのか?と疑問に思う程だ。
食べ終わってからユウの元へ行くとユウは布団に横になって暇そうにしていた。やっぱり元気そうだ。


「お、炭治郎達。様子見に来てくれたの?」
「ユウさんユウさんユウさんユウさんっ!!じゅ、重症って!大事な、大事な、体に!!傷を!?」
「言うほど重症じゃないよ〜。手を骨折してて、腹を縫ったくらい」
「それを!!!!重症と!!!!言うんです!!!!」


女の人には怒ったりしないであろう善逸も流石にユウの返答が許せなかったのだろう。絶対安静にしで下さいね!と叫ぶとさっさと部屋を後にする様炭治郎と伊之助を引っ張って大部屋へと戻る。伊之助はユウが勝負してくれると言った事を忘れてはいなかったが、流石に血の匂いがするユウを前に勝負と言うのは憚れたようだった。







「……君達、騒がしいんだけど」


静かに、ぽつり、とユウは呟いた。


「アッ!?ユウさん!?」


刀を構えて炭治郎へと向けていた善逸だが、重症で絶対安静と言われていたユウが大部屋へと足を運んでいた事にとても驚いた。ふらり、と1歩進もうとして体制を崩しかけたユウを善逸が慌てて支えに向かう。


「……善逸、君は鬼殺隊同士戦うなって知らないの?」
「ヒィッ!?し、しししし知ってます!!」
「煩い、騒ぐな、今何時だと思ってんだ」
「ハィィィイ……!!すすすすすみません……っ!」


ふぅ、と善逸に支えられてながらも床に座り込む。ユウは腹に手を当てゆっくりと呼吸を数度行なっていた。


「あの、ユウさん。煩くしてごめんなさい。起きてしまいましたか……?」


炭治郎も慌ててユウを支えに寄る。ユウは顔に汗を浮かべながらも首を左右に振った。


「痛みで寝れてなかったから私は別に良いんだけどさ。ここのお婆さんはもう寝てるんだから気を遣いなさい。善意でして貰ってる事なんだから。善逸、良いね?」
「……はい」
「分かれば宜しい。それじゃあ説明して貰おうか、炭治郎」


ユウが目を細めたのを炭治郎は感じた。


「君が、鬼を連れている事について」

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