3人で少しばかり話をした。
どうやらユウは足を怪我しており、最終選別会場に戻るのにかなり時間がかかったらしかった。怪我をしていながらも、玉鋼を選び、育手の所までその日の内に戻ったらしい事は驚いたが。
その後は自分達と同じ様に任務を遂行していき、音柱である宇髄天元の継子となったみたいだ。


「いやーそれにしても驚いたよ。君達とっくのとうに死んでると思ってたんだから。まさか生きてて先に柱になってるとは。人生分かんないもんだねぇ」


さらりと逆に錆兎達を死人の様に扱うが、先ほどユウを死人扱いしてしまったので文句も何も言えなかった。


「……ユウは柱にならないのか?」
「なれってお館様に言われたらなるけど、あんまりなりたくは無いかな。仕事大変そうだし、鬼に柱だと目付けられるし。多分良い事無いよ、実際。鬼殺隊で威張れるくらいじゃない?」
「…………お前はそれを俺の前で言うんだな」
「あ、気に障った?そしたらごめん。まぁ私の意見って事で。基本的に皆柱目指して鍛錬してるしねぇ。2人もそうだったでしょ?」


まぁ、確かに、と自分達を振り返って錆兎と義勇は頷いた。柱になる為に鬼を殺していた訳では無いが、まぁ1つの目標としては持っていた気はする。


「……君達成長したんだね。あの時は鬼を殺す、じゃなくて、倒すって言ってた。男子、三日会わざれば刮目してみよとは言ったもんだ。その通りだよね、鬼は自分の為に人を殺して生きる、鬼殺隊は自分の都合でそれを阻止する為に鬼を殺す。こっち側が正しいなんてそんなの傲慢だ。力を奮う奴が正しいと思う事が全てなのにさ」


2人に問いかけるでもなくユウは淡々と言葉を紡いだ。
何も言わずただ目を丸くして驚く2人へ先程と同じ様にへらり、と笑い、所で、とユウは義勇を指差して錆兎へと問う。


「義勇の事継子にしないの?基本的に今まで2人でやってきてたんでしょ?」
「そんな事出来るのか?」
「いやいや、君は柱でしょうに。柱なら誰でも出来るよ、例え柱になったばっかりでもね。それに君達は同じ位だし育てるっていうより切磋琢磨してくって感じだし錆兎もやり易いんじゃないの?」


俺が錆兎の継子に?といった様子の義勇にユウはふふん、と腰に手を当て胸を張り声高らかに宣言する。


「という事で、私の意見を君達に伝えよう!」


まぁお館様はここまで予想していただろうね、と腰に当てていた手を直ぐに下ろした。


「継子は技の継承も有るけれど、予備なんじゃないかと私は個人的に感じてる。勿論、抜きん出た一般隊員が沢山出てくるのが理想なんだろうけど、世代によっては直ぐに死ぬ様な世代もあるわけだ。でもどんなに不作でも柱は途切らさせてはいけないものであるのは、君達も分かってるよね?」
「そうだな。鬼に攻め時を与えない為にも」
「そうだ。だから"柱が直々に、自分がもし何かあった場合の柱となりえる予備"が継子制度の裏理由なんじゃないかと思ってる訳だ。多分、師匠が柱を辞める時は私が柱に繰り上げになるんじゃないかな。他に優秀な隊員が居なければ。……ま、私はどんな理由であれ師匠の技術とかを学べれば学べる程、簡単には死ななくなるから嫌がる理由は無いんだけどね」


じっ、と錆兎と義勇がユウを見つめる。
彼女の言葉には何か聞かなくてはならないと思わせる様な、強制力というか、不思議な感覚がある。
彼女は自分達の1歩先を行く思考力、想像力があるのでは?と。自分の新たな知識を開拓できるのでは?と。続きを待ってしまう程、興味深い考察であるのも理由の1つだろう。


「まぁ長々と、継子は柱の予備だと思ってるって話なんだけれども。……そこで、だ。お館様の実際の思惑は分からないけれど、君が柱になるまで、柱の人達に足りなかったものは分かるかい?」
「……水柱?」
「そうだ。柱には毎回炎と水は必ず居る。それがどういった意味があるのかは私にはまだ分からない。けれども片方を柱とすれば仲のいいもう1人は継子になるであろう事もお館様は想像している筈だ。もうその時点で水柱は2代分は保つであろう事が決まる。ただでさえ、"煉獄さんの方は怪しい"んだから水の方は安泰にしとこうというのは分かる」


ふむ、と錆兎は何となくユウが言いたいであろう事が分かった。鬼殺隊の利点としては水柱が直ぐに居なくなったとしても、楽に引き継げる様に、2人で鬼を退治してきており着々と力をつけている自分達を選んだのだろう、と。
違う水の呼吸の使い手を選んだのなら、継子を探す所から始め、育てなければならない。ユウの言う裏の理由はきっと柱に公になって無いのだろう事が分かる。継子を持たぬ柱も居るのだから。


「ま、ここまでが義勇を継子にする場合の鬼殺隊側の利点と考えられる。次は君達自身の利点だ」
「……続けてくれ」
「まぁこっちは簡単で明快だよ。君達が今まで一緒に任務を遂行してきたから、片方が柱になって片方が一般隊員になると一緒に任務がしずらくなる。それを防げる所」


いくら1人で任務をこなしてるっていってもまだ不安でしょ、と、まだ1日も立っていない再会なのにユウにぴしゃりと言い当てられる。
義勇も心当たりがあるのか、目をぱちくりと強かせて驚いた。


「お館様もどっちが柱でも良かったんだろうけど、まだ錆兎の方が他の人が受け入れやすいと考えたんだろうねぇ。義勇は考えてる事の半分も言わないし。それに義勇が錆兎を継子にするとは絶対考えられないし。錆兎ならまだしそうだもん」
「……俺はしなさそうか」
「しなさそうって言うか、錆兎が継子になるのは合わなさそうな感じする」


軽く笑った後に、まぁだからさ、と言葉を続け、


「どっちにとってもいい事ずくしなんだから、継子にすれば?」


あっけらかんと言い放った。

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