さて、とお館様が不死川が何も言わなくなったのを確認して話し始めた。
ユウは傷口を圧迫しながら畳の上から降りる。普通ならそろそろ止まる筈なのに血は止まらなかった。
止血に使っているタオルがどんどん赤く染まり、頭が回らなくなる。


「ユウっ。お前無茶をするな!」


錆兎が慌てて近付きユウの止血を変わる。瞬間、血が止まったのだ。
ユウの中で仮説が確認にかわった瞬間だった。


「お館様」


錆兎に支えられながらもユウはお館様の言葉を遮った。その事に不死川がまたも口を開こうとしたがその前にユウは続ける。


「私、鬼の血鬼術に掛かったままの様です」


隣にいる錆兎も、他の人も、全員がユウを驚いた表情で見つめた。







炭治郎の件は取り敢えず終わり、やっと本来の柱合会議になったが、ユウはお館様へと那田蜘蛛山で起こった事を全て話した。


「……以上が私が遭遇した鬼との件です。鬼の首を切った事で血気術は無くなったと思っていたのですが」
「なるほど。……今ここで使う事は出来るかな?」
「……"呼吸でも止血は可能である"とかでしょうか?」


軽く切ってくれない?と持っていた短刀を錆兎に渡すが、錆兎は激しく首を左右に振るだけだった。お願い、と念押ししたら諦めたのか受け取って本当に小さな切り傷を作る。
意外に人を切るのが上手かった。
これを本人に言ったら傷付きそうだったので口にはしなかったが。
傷を確認して呼吸をする。ゆっくり、ゆっくり場所を特定して縄を締めるように一気に。


「……と、止まった」


錆兎が安心したように息を吐く。
ふむ、とお館様は何かを考える様に顎に手を当てて宇髄へ顔を向ける。


「どうだった?天元」
「……聞き取れなかった」
「……"師匠"」


どうやらお館様は宇髄へとユウの発した音を聞きとって欲しかった様だ。それなら、とユウは短い間に聴き分けた音を発し始めた。
それはお館様の喋り方の真似である。


「"どうです?聞き取れますか?お館様の音の出し方を真似しているんですけど"」
「……音の受ける感覚はそっくりだ」


宇髄の返答は、分からない、だった。感覚的にはお館様の真似の様に感じるが、喋り方や癖が似ている訳ではない。


「低くて落ち着いてズドンときます。いつもはさらっとしていました」


錆兎がさらりと答えた。
なるほど、と頷くと、お館様は静かになってしまう。少しして宇髄へとユウを少しの間借りると告げた。


「よし。しのぶ、君の所で少しユウを調べて貰えるかな。錆兎、君はユウの感覚を言葉にする事。義勇はそれを他に伝わる言葉にしてくれる?」
「御意」
「それじゃあユウは今すぐに体の傷を治すために、安静にする事」


それでは、としのぶが笑顔で手を叩くと隠が現れ、炭治郎と同じ様にユウを運び出される。
お館様、錆兎の感覚は義勇に伝わり、義勇はそれを言葉に出来ても口には出来ないんですよ、と伝える事は叶わなかった。

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