「確かに継子である私が口を挟むのはいけない事です。この事に関しては後で師匠からきっちり罰がくると思いますし、お館様からの罰も受けます。発言を許可していただけますか?お館様」
「言いたい事があるんだろう?この場での継子の発言を許可しよう。……許可をするも何もユウは発言していたけどね」


ふふふ、と楽しそうにお館様は笑った。
ユウがする言葉遊びに少し興が乗ってきたのだろうか。


「禰豆子の事は容認していました。私が怪我をしているのは皆さん見て分かりますよね」


隊服の上をまくって腹に巻かれた包帯を見せる。もちろん隊服に血が残っている為分かるだろうが、念の為であった。
その際に錆兎が「ひぇ」と女子の様な小さい悲鳴をあげる。それは私があげるべきなんじゃないか、と呆れつつも服を元に戻す。この時代、女性が肌を自ら晒すなど恥ずかしい事ではあるが、鬼に食べられている素肌の女性など見慣れているだろうに。


「この傷は那田蜘蛛山に向かう前、炭治郎達と藤の家に行く前に出来たものです。そして私はこの状態で禰豆子に触れています、が、禰豆子は私に興味を示しませんでした。……目の前に血の匂いがしているのに、です」
「それが事実だと証明出来る物はあるのかよ」
「……見ている人はいますが、不死川さんは納得されないと思いますよ?」


炭治郎と彼の同期の善逸です、と言ったユウに錆兎はなんとも言えない表情をしていた。錆兎も炭治郎側の人が見たと言っても信じてもらえないと思ったのだろう。


「…………そうですね、もしここで不死川さんが禰豆子を理由もなく殺すとなったら……例えばの話ですよ。例えば、例えば〜……弟さんがいらっしゃいましたよねぇ。どうやら鬼殺隊に入ったとか入ってないとか」


おおっと、とユウはわざと日輪刀とは別の普通の短刀を地面に落とした。


「失礼しました、刀が落ちてしまいましたね。……例えば、さっき話したみたいに、鬼殺隊の人を全員同一視しちゃったりとか」
「…………脅そうってか」
「いやいやいや、そんな柱様に脅すなど!!ねぇ、煉獄さん、可愛い弟が鬼殺隊の者と間違えられたり、とか!そんな事無いですよねぇ!」


あっはっはっ、と棒読みでユウは笑った。
ピリッと場の空気が殺伐としたものになる。ユウの噂を知っている人は理解したのだ。遠回しに"お前の身内を殺すぞ"と言われている事に。


「ユウ」
「失礼しました、お館様」


咎める様に名前を呼ばれてユウは深く頭を下げた。自分でも理解しているのだ。やり過ぎではあると。
けれど禰豆子は殺させない、その為なら何だってしても良いとも思っている。だって、禰豆子が死んでしまったら、錆兎と義勇が死ななければならなくなるのだから。
不死川が舌打ちを隠しもせずした。


「お前はただ多く殺したいだけだろうが。その為なら鬼にだって味方する。そんな奴に話し合いの場に出る資格はねぇ。掻きまわすだけなら消えろ」


不死川の言葉にユウは開きかけていた口を閉じた。ユウはこの言葉を否定出来ないのだ。
そのユウの様子に錆兎、義勇は目を大きく見開き驚いている。どうして何も言い返さないのか、と。
ユウはただじっと不死川を見つめる。


「……はっ。そんなに言うならお前が目の前で証明してみせろよ。こいつの前で血を流せ」


そう言うや否、不死川は禰豆子が入っている箱に深々と日輪刀を3度刺し、ユウへと投げ渡した。反射的に受け取ったユウは箱が腹に当たってしまい鈍い悲鳴を少し上げる。
咄嗟に支えに入ろうとした錆兎を目だけで制し、宇髄へと少し顔を向けた。


「……やってきます」
「…………」


宇髄は何も言わない。
お館様へと軽く頭を下げると畳の上で箱を開けた。禰豆子は息を乱しながら立ち上がる。
ユウは禰豆子の前に手を出すと、反対の手で腕を深く斬りつけた。痛みに顔を歪めるが血の滴り落ちる手を禰豆子へと近づけていく。


「禰豆子!!」


炭治郎が悲鳴の様な声で禰豆子の名を呼ぶ。
大丈夫、きっと大丈夫、と少し虚ろげな視界の中で禰豆子の頭へと手を乗せた。


「……良い子のままでいてねって言ったよね」


ぼたぼたと血が流れているがユウはゆっくり頭を撫で始めた。禰豆子はユウと目を合わせると、ユウの手を掴んで頭から離す。
錆兎が一瞬、刀へと手を伸ばしたが、禰豆子はユウの手を離すとぷいっとそっぽをむいてしまった。


「不死川さん。ちゃんと見てました?」


ユウは不死川へとにっこり笑った。

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