2度目に会ったのはユウが鬼殺隊に入って少し経った時。


「……よろしくお願いします」


目には感情は無く、ただ宇髄をそこにいる物置程度にしか思っていないだろう事ははっきりと分かった。祭りの神である自分を物置扱いたぁいいご身分だなぁといらいらとしていた宇髄をユウは見つめる。


「……あの時は助けて頂き、ありがとうございました」
「はぁ?お前を助けた?いつ?」
「…………いえ、覚えていないのなら良いです」


ふい、とユウは夜の街を眺めていた。その横顔がどこか諦めに似た何かを浮かべていて、確かに1度見た記憶がある。


「宇髄さん。鬼、出ました」
「……よし、行くぞ」


はい、と必要最低の返事だけ返したユウだったが、柱である宇髄のスピードについてきていたし、鬼との戦闘も上手かった。中々良い新人だなと感心していた時、女性の悲鳴が街に響く。
慌てて2人で悲鳴の所へ行くと鬼は居らず、男達が女に迫っていた。鬼が居たというのに何を呑気な事を、と驚いて止まってしまった宇髄とは違いユウはまるでこういった場面に遭遇したらどうするかを決めていたかの様に男達を蹴り飛ばし女に声をかける。


「同意の上?」
「……っ」


女性は声が出ないのか首を左右に強く振る。


「……知り合い?」


女性の首がまた左右に振られる。


「分かった。ここから先は貴女は見なくていい。人が殺される場面はきっと辛いだろうから」


女性はユウの返答にとても驚いていたけれど、こくりと頷くと目を閉じた。それを見届けてからユウは鬼殺隊士に配られる色変わりの刀、日輪刀とは違う、"普通の短刀"をどこからか出したかと思うと男達の側へと向かい躊躇なく急所に差し込む。
男達の鈍い悲鳴と助けをこう声に全く耳を傾けず、静かになるまでユウは刀を差し込んでは抜いた。
ーー宇髄は動けなかった。


「……止めないでいてくれてありがとうございます、宇髄さん」


ユウはゆらり、と立つとゆっくり刀を仕舞い女性に死体が見えないように誘導して家に返した。


「……お前、あの時の奴か」


ぽつりと宇髄が零す。
宇髄が柱になる前、ある街で少女を助けた。その少女は鬼から逃げ、丁度見つけた見知った男に妹を託すと鬼に襲われている母達の元へ戻ったのだ。そこに丁度、宇髄が到着し、鬼の首を切った。
母達は間に合わず死体になっていたが、少女は宇髄と共に妹の元へ戻る。
……が、戻った先には少女の妹は死んでいた。


「そうです」


大きくなった少女は初めて宇髄に向かってにっこりと笑った。







ユウは床に突っ伏していた。


「……師匠、もう無理です」
「無理なんかじゃねぇ」


嫌だと言いたげに額を床にぐりぐりと擦り付けているユウを問答無用で宇髄は首根っこを掴んで立たせる。


「いいか、お前はこの祭りの神である、宇髄天元様の継子なんだぞ。意地と気合で音を聞きわけろ」
「わっかりませんよぉ!!ならもっと耳の良い子を継子にすれば良かったでしょう!?」
「お前の命を助けてやったのは俺様だ、感謝してんだろぉ?」


してますけど〜、と少し唇を突き出し不貞腐れたユウは渋々と髪を耳にかけた。


「……もう1回お願いします」


宇髄は笑う。
元凶を殺しても似たような奴を殺しまくってたお前だからこそ、まわりに何を言われようとも、諦めの悪さをかって継子にしたんだ、と。
継子にして数年。
同時進行で毒の耐性やら、"忍"っぽい事も仕込んでいる為少しやり過ぎか?と思いつつも強くなれるなら良いじゃねぇかと嬉々としてユウに嫁共々仕込んでいる。そのお陰か、ユウも随分普通に話す様になった。


「……師匠はどうして私を継子にしたんですか?」


継子にした当初、ユウからそう聞かれた事があった。


「隠に言われた事なんか気にするな。お前は"ちゃんと理解してる"し、俺達はそれを"知っている"」


あの時の判断は間違ってなかったと今でも言える。

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