一般的な家よりも大きい緑生い茂る薬草園。そこにユウは朝早くから立っていた。


「んーーーー!!」


誰も人が居ない事をいい事に、両手を目一杯上げて背筋を伸ばす。そして一気に力を抜いて腕を下ろす。ユウは肩に手を当てて首をゴキゴキと関節を鳴らしながら薬草園の出口に向かって歩き始めた。


「いやーいい朝だーー。こんな日は散歩したくなるよねー。………ははは」


勿論、誰も居ないのでユウの独り言として言われたそれは自分自身に言っているのだろう。何故、ユウが1人でこんな所に居るかというとそれは1時間程前に遡る。







ピピピピ、と軽快な音が鳴ってユウは起床する。慣れた手つきで音を止め身体をベットから軽々と起こす。
近くに畳んで置いてあった、Tシャツ、フードの付いたパーカーと膝下までの7分のズボンに着替え部屋から出る。迷いなく廊下を歩き始め、目的地はどうやら動物達の居る馬車らしい。


「……ぁ"ー眠い。早く日光に当たらないと目が覚めない…………」


端から見たら真っ直ぐに歩けているし、目もぱっちりと開いている。まぁ、確かに言われれば覇気がないような気もするがユウの状況は目が覚めている、と言っても良いかもしれない。
メイドらしき人物達が慌ただしくユウとは別の方向へ行ったり戻ってきたりしているが、御構い無しに歩みを進める。この時間に起きている人も居るのだろう、特に驚きもせずに自分の仕事をこなしていた。
ユウが馬車の場所まで来ると、外だからなのか人っ子1人居なかった。馬がユウに気付いて擦り寄ってくる。まるでおはよう、とユウに言いに来てる様だ。


「あーはいはい、おはよう、おはよう。朝っぱらから元気ね」


馬をひと撫ですると、その場から離れ馬車の荷台へと移動する。中では動物達皆、起きていた。


「はーい、おはよう。ちょっと待ってね」


近くにあった袋を手繰り寄せて開けると、そこには色々な種類の動物用の食べ物が合った。ユウは彼らに朝ごはんを渡す為に来たのだろう。近場の檻から鍵を開けて中に入って皿に入れる。その時に水も勿論入れ替えるのも忘れない。
数分間、その作業を手際良くしていたユウの手が止まった。


「…………げ、遅かった。ピトがま〜た逃げ出した」


ユウの視線の先には鍵が開けられている、住民が居ない檻が合った。鍵は上から引っ掛けるだけの簡単な作りの物なので頭の良いこの動物達なら勿論簡単に出る事が出来る。だが、この子達はそういう事は一部を除いて一切しない。出てもする事が無いというのも有るのだろうが、1番はユウに迷惑がかかるからだろう。
いくら人を傷付ける事はしないといえども、結局彼らは人の言葉が通じないと思われてる動物。レオなんか檻から出ている所を発表の場でもない限り見つかると恐れられ、ユウが毎度頭を下げている。
そんな場面を見れば頭の良い彼らは察するだろう。


「……探しに行くかぁ。取り敢えずこっち先に終わらせよう」


半ば諦めた様に残りの作業をすると、ユウは荷台から出る。首元から1つの笛を1度取り出したものの、少し考える仕草をしてからしまった。
現時刻、6時。
流石にこんな朝っぱらから笛の音を鳴らす事は出来なかった。
ユウは右手の人差し指を立ててクルクル回すとある一点を指差した。


「取り敢えず、近場のあそこ、薬草園かな?探して見るかぁ」


prev / back / next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -