「へぇ〜。それじゃあ門番さん達、白雪とも仲良しなんだね」
「仲良しと言いますか、顔見知り程度かと……。そこまで込み入った話もしてませんし」


門番達も、もうユウがサーカス団の関係者では無いという事を考えて居ない様だった。ユウのコミュニケーション能力はかなり高い。
人の表情や仕草から何が嫌なのか、を機敏に感じ取り地雷をまず踏まない様に気を付けて居るのだろう。そこら辺はオビと変わらない。しかしオビには"怪しさ"というのがある。第一印象の見た目からだとどうにも警戒してしまうのだろう。


「……オビさんって第2王子付伝令役なんだよね?なんかカッチリしてるイメージだったから驚いたんだよね」
「あぁ、オビ殿ですか。オビ殿は最近殿下付になったんですよ。他にキキ殿や、ミツヒデ殿が居て2人はイメージ通りかと」
「へぇ〜。見てみたいなぁ」
「多分、殿下なら挨拶に行く筈なので会えると思いますよ?」


ユウはどんどんと門番から情報を聞いていく。これが昔からの知り合いなら兎も角、今日初めて会った人にこれだとは口が軽くて良いものかと少し不安になるものの、まぁ良いか、と思ってしまう。殿下付ならかなりの実力者だろうし、どうにか出来るだろう。


「ユウ〜おーい」


門の内側から団長の声が響いた。


「おっ、お迎えだ」
「お待たせしました、ユウさん」
「こちらからどうぞ」


門番達に言われるがままにユウは移動する。最後に門番達に手を振ってユウは門の前から消えて行った。


「元気な良い子でしたね、先輩」
「お前、キキ殿、白雪殿の次はユウさんか?」


門番達の歳相応らしい会話はユウには聞こえて居なかった。
ユウが門を潜り終わると飄々とした団長が待っていた。団長を見つけるとユウは小走りで寄って行く。


「団長、殿下付のオビさんと見習い薬剤師の白雪のお陰で迷わなかったよ!」
「お前まーた知り合いを増やしたのか。……ん?殿下付?え?え?」
「凄いよねぇ。聞いた時、びっくりしちゃったもん」


団長はユウの様子に頭を抱える様に唸った。面倒事をユウが連れてこないか心配なのだろう。何時もの事なのでユウは軽く流して進む様に促す。


「はぁ……。失礼な事してないだろうな?これから殿下が会いに来られるんだから」
「私がそんな地雷を自ら踏みに行くとでも?……まぁ、分かりにくいタイプだったから微妙だけど、手応えはあったかなぁ」


それだけ聞くと団長は無言で先を歩き始めた。もしかしたら、その殿下が来る時間がもう直ぐなのかもしれない。ユウは大人しく団長の後をついて行く。


「……げ」


団長が急に止まった。何事かとユウも顔を団長の背中から出すと、視線の先には見覚えのあるサーカス団の馬車が幾つか有り、その1つに4人が固まって待っていた。その中には先程会ったオビも居る。


「すみません、殿下!!うちのおっちょこちょいの所為で遅れてしまって」


ユウは首根っこを掴まれて4人の塊に連れて行かれる。


「いや、気にしなくて良い。オビから話は少し聞いたからな。ゼン・ウィスタリアだ」
「側近のミツヒデ・ルーエンです」
「同じく、木々・セイランです」
「オビです」
「あ、これはどうも。団長をしてます。こっちはウチの看板娘です」
「ユウです」


取り敢えず、お咎めなしらしい。名前を告げるとユウは首根っこを掴んでいた手を離して貰えた。団長はゼンに頭を下げる。


「今回はお呼び頂いてありがとうございます。ウチの動物達の事も考慮して頂き、早めに入れて頂きましたし感謝がつきません。ゼン殿下」
「いや、気にするな。此方が呼んだのだし当然の事だ」
「そうですか。それなら良かったです。此処には何用でしょうか?」


在り来たりなお礼を述べるとさっそくとばかりに本件に入る。


「あ、いや。挨拶に来ただけで特に用という事は無かったんだが……」
「主、動物見せて貰いましょうよ!当日は忙しくて見れないだろうし!」
「…………と、いう事だ。可能だろうか?」


ゼンはこのまま終わりそうになったものの、オビの発言によって申し訳無さそうに聞いてきた。団長は勿論了承し、ユウをゼンの前に突き出す。


「それならユウに案内させますね。この子が担当なので。私はまだする事が有るので此処で失礼します。……ユウ、粗相のない様に。この後、予定は無いからゆっくりで構わないよ」
「はーい。殿下、此方になります」


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