「えーっと、数年に1度市民に王城の一画を解放する行事で、そして幾つか催しがある。劇団招致……ん?劇団招致?サーカスって劇団なの?まぁ、いいや」


ユウは街を歩きながら王城開放日の情報を読み込んでいた。左目辺りには眼帯をつけて、目立たない様にパーカーを被っている。端から見たら顔を隠した人がブツブツと何かを読み込んでいる様子は異様で近付けないだろう。


「主が、当日の夜に差し入れの手配するんだって。何だろね」
「そういえばゼンの差し入れってどんなのなんだろう。お酒とか?」
「まぁそこら辺の何かだろうとは思うけど」


集中しているユウには前から来ている2人の人物にきづかずにどんどんと足を進めていく。前から来ている2人もそんなユウに気付かないのか2組はどんどんと寄っていく。


「うわっ!」
「おっと」


ついに、というか、やはり2組はぶつかってしまった。
不幸中の幸いか、2人組の方の少女は無事で、少年の方とユウはぶつかってしまう。しかし、少年は器用にユウを受け止め大怪我になる様な事は無かった。


「っとと、大丈夫?お嬢さん」
「あ、私は大丈夫。そっちの方は?」


少年に受け止められながら、心配そうに2人から顔を覗かれて、慌てて顔を下に向ける。此処で顔を見られたりしたら団長と約束した意味が全く無くなってしまう、と思ったからだ。


「ありがとうございます。すみません。前を向いて居なかったので」
「いえいえ。こっちも見てなかったし、おあいこって奴で」


ユウはゆっくりと少年から離れて頭を下げる。さっさと離れるが吉、と思い先程持っていた地図を地面に探す。……が、見当たらない。


「あ、これですか?落ちてましたよ」


少女から差し出された地図を受け取ろうと顔を上げるとそこには真っ赤な髪をした綺麗な女の子が居た。


「…………ま、真っ赤。……林檎みたい」


少女の方も、ユウを見つめてぽかんと口を開けて惚けている。少年が2人の顔の間で右手を振るとユウ達は慌てて距離を取る。街の人に失礼な事をしたら団長に後で怒られるだろう事が容易に想像出来た。


「ジロジロ見ちゃってごめんなさい!その、白い髪が綺麗で……」
「え!?い、いえ、こちらこそ林檎みたいだなぁとか思っちゃってすみません!」


そのやり取りを暫く黙って聞いていた少年は、耐え切れなくなったのか吹き出す。


「あははは。お嬢さん達、同じ事言ってるの気付いてる?……そこのお嬢さん?は何でまたこんな所に?見た所、此処の国の人じゃないよね」
「あ、はい。王城開放日?っていうので催しで呼ばれて、街を探検してます」


なんて事ない様に告げると2人は「そっかー」と頷いて居たが、少ししてピタリと止まると目を大きく見開いてユウの顔をまじまじと見つめる。


「あれ、じゃあもしかして主が言ってたサーカス団の人?」
「え?今日から城に入るって噂してた?」
「まぁ、そんな所です」


私にとってそれは凄い事だと団長に口煩く言われた為、はにかみながらも肯定した。2人はそれを聞くと、じゃあ、と自分達の事についても切り出す。


「それじゃあ、当日も会うかもね。俺、第2王子付伝令役のオビって言うんだ」
「あ、宮廷薬剤師見習いの白雪です。……良ければこの後案内しましょうか?」


今度は逆にユウの方が大きく目を見開いた。まさかそんな人達がこんな所で自分とぶつかるとは思っていなかったのだ。


「…………そ、そんな凄い人達だったの!!??でもご好意に甘えて!案内お願いします!!」


ユウの声はとても大きく響いた。

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