次の日、オビとユウは側から見たら普通であろう様子で会話をしていた。その為、ゼン達が不思議に思う事も無いだろう。
約束通りにゼン達に見せる事が出来たユウはほっと息を吐いた。
わざわざ別れの挨拶にも足を運んで貰い、ユウは申し訳なさが溢れる。


「ユウ殿、すまなかったな。……我儘を言ってしまって」
「いえ、お気になさらずに。うちの子達を好きになって頂けるのは嬉しいですし」


少し申し訳なさそうにゼンはユウに告げる。しかしユウとしては予想していた為に用意していた返事を返した。
オビを避けていた時があった為ゼン達とも気まずくならない様に気を張っているのだろう。


「そういえばユウは昨日居なかったけど、大丈夫?」
「……あ。えーっと。その、余りああいう場が好きでは無いので……」
「なんだ〜。ユウさん、体調崩してたのかと心配しましたよ〜!!」


木々と白雪がユウの顔色を見る様に覗き込んでくる。
昨日は、オビと居づらかったという理由が大半であるが、少なからずユウは宴という場が苦手であった。人目を引く見た目である事は充分理解している。それ故に、絡まれる確率も高くなるのだ。


「ほんの少しの間だったけど寂しくなるなぁ」
「本当にもう来ないのか?」
「えー!?ユウさんともう会えないんですか?」
「はい。……ごめんね、白雪。うちの団のルールっていうか決まりだから」


ミツヒデは感慨深そうに呟く。それを皮切りにゼンや白雪も続く。
好いて貰えるのは嬉しいけれど、ユウにとっては自分の家の様な存在の方が大事なのだ。


「近くを通ったらいつでも遊びにおいで。顔を見せる位なら平気でしょう?」
「……あはは、木々さんってば策士〜。分かりました。通る事があったら是非」


だから、木々がその決まりの穴を突く様な事を考え、そして告げてくれた事がユウはとても嬉しかったのだ。
こうしてゼン達と出会えて、本当に良かったとユウは思う。だからこそ別れ惜しいと思ってしまう。
そして、ユウにはやらねばならない事がある。


「……オビさん。最後に一個だけ、お願いしても良い?」


今迄無言を貫いていたオビにユウは話しかける。
オビは一瞬驚いたものの、「なぁに?」と優しく続きを促した。



「私の事、思いっきり、振ってほしいの」



ユウの一言でその場が静まり返った。言われたオビ本人も驚きの余り絶句している。


「……ユウさん、オビの事好きだったんだ」
「いや〜気付かなかった。しっかしオビねぇ?」
「いやいや、その言い方だとオビが良く無いみたいに聞こえるぞ、ゼン」
「オビに彼女なんかイメージ湧かない」
「こら、木々!」


オビを除く4人は静かに2、3歩後ろに下がると小声で話し始める。
オビは目をぱちくりと強かせると、大きな溜息を吐く。ゼン達は肩を大きく震わせるものの、ユウは予想していた反応だったのだろう、笑っている。


「あはは、やっぱり。オビさんだけ異常だったんだ」
「異常も何も、気が緩んでる時だったしユウ嬢は上手く隠してたよ?」
「でも結果本人にバレてたら意味ないよね〜」
「まぁそれもそうか」


ユウとオビの様子は違和感しか無い物でありゼンはつい、口を出してしまった。


「……え?オビ、お前、知ってたのか?」
「まぁ。……でもユウ嬢、本当に上手く隠してたし主が気付かなくても仕方ないですよ?」
「そこじゃない!!!!俺は、その事を、言ってるんじゃなくて!!」


ゼンが言いたい事をオビはきちんと理解しているのだろう。けれどゼンがどうしてそれを知りたいのか分からずに首を傾げる。


「でも、どっちにしろ答えられないんだから、知らないふりしてた方が良いじゃないですか」
「まぁそれに気付かれてる様じゃ意味ないけどね」
「いや〜、でもユウ嬢じゃなかったらバレてなかったんじゃない?結構分かんなかったでしょ?」
「うーん。どうだろ?まぁ私だからってのもあるかもしれないけど瞬殺だったよ?」
「うっそ!!何それー!!恥ずかしいやつじゃんか!」


2人のやり取りは恋をしている、というやり取りでは無く友人がじゃれている様でもある。軽口を叩き合うオビとユウはゼン達から見て異様でもあるのだろう。
ユウは昨日の段階で諦めを付けているし、オビもユウの発言である程度理解している筈だ。


「殿下、よく考えて下さい。もし、仮に、私達が好き合っていてもどうにもならない事じゃないですか。それよか全然マシですよ?」
「な、何を……」
「好き合っているものの別れなければならない2人、よりも、片方が思いっきりふられてさっぱりした別れ、の方が綺麗じゃないですか」


ゼンが何をそんなに渋っているのかが全く分からないユウは不思議そうに、淡々とそう告げた。

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