劇団も終わり、いよいよユウ率いるサーカス団の出番となった。
舞台に出ていた、怪我をした2人の女性も勿論、昼とは比べものにならない程人で溢れかえっていた。それもそうだろう、最後の出し物でも有るのだから。
ゼン達はユウが用意してくれた、見やすい席に並んで開始を待っていた。


「大変長らくお待たせしました〜!サーカス団開始しま〜す!」


ユウののんびりとした声が風に乗って聞こえて来たと同時にピィ〜、と笛の音が鳴り響く。その音色は前に聞いた物では無かった。
笛の音と同時にに他方からここら辺に住んでいる鳥では無い、珍しい鳥達が中心に向かって飛んでくる。大きさも様々でお客さんの頭上をくるくると回る子も居ればさっさと飛んで行く子と様々であった。
行き先は舞台上中央にいるユウの元。
服は先程まで来ていた物であったが、目にしていた眼帯は取られており、人目を引く見た目を惜しげも無く晒していた。


「まだまだ、始まったばかり!!こんな事で惚けてちゃ、後が持ちませんよ〜!!」


その言葉通り、その後も動物やサーカス団のメンバーによる出し物が沢山行われた。お客は誰もが目をきらきらと輝かせ、舞台を食い入る様に見ており、舞台上にいる誰もが自分を見ろ、と心に訴えかけてくる。


「最後はうちで1番のエース、レオの登場です!!」


ユウの声と同時に低い、よく通るライオンの鳴き声がその場に響いた。小さい子は泣いてしまうかと心配も少しあったオビであったが、どうやらそれは杞憂らしく、はしゃいで舞台を見つめている。
これが見せる事を仕事にしている人達なのか、とオビは感心してほう、と息を吐く。
隣にいる白雪とゼンはもうはしゃいで舞台を見つめているし、ミツヒデとキキも白雪達とまではいかないが、興味深そうに舞台から目を離さない。


「うーん、それじゃあ誰かに手伝って貰おうかな!手伝ってくれる人〜!!」


ユウが流れる様に左手を上に伸ばすと小さい子達は我先に、と手を挙げる。しかしどうやらユウは小さい子達にさせる気は無いらしく、うーんと唸りながら客席を眺めている。
確かに、怖くて泣かれちゃ熱が冷めてしまうのだろう。


「よし!うちの子に決めて貰おうかな!」


ユウがそう叫ぶと近くに居た綺麗な群青色の鳥を呼ぶ。その鳥はユウの言わんとしている事が分かるのだろう。音を立てずに飛び上がると手を挙げている子達の間をゆっくりと通る。


「んん??」


横にいるゼンと白雪も真っ直ぐに手を挙げているし、隣のミツヒデも控えめに手を挙げている。キキに至っては後で見せて貰おう、と算段を立てていた。
しかし、やっぱりというか、ゼン達は選ばれる事なく一般市民の親子が選ばれる。まぁ、ここで王子を選んでみたらヤラセかと思われるかもしれないから当然といえば当然だろう。


「……くっ!これが終わったら近くで見せて貰おう…………」
「わ、私も行きたいです!」
「ゼンの監視がてら俺もだな」
「そうだね」


どうか他の人には聞かれてません様に、とオビは心の中で祈る。舞台ではどうやらエサをあげるらしかった。そのお礼に、と生のライオンを撫でさせて貰い、背中に乗せて貰っても居た。
あれ、結構ズルいな、とオビが思うのだから他の人も思うのだろう。あちこちから「いーなー」と羨ましそうな声が掛けられる。背中に乗せて貰った親子は幸せそうな顔をして席に戻って行った。
横の4人も後で乗せて貰おう、と思っているのだろう。それ職権乱用って言うんですよ、とオビは伝える事が出来なかった。


「お手伝いありがとう〜!!さて、お肉を食べた事だし行けるかな?」


ユウが尋ねる様にライオンに声を掛けると舞台袖から輪が3つ程出てくる。どうやらこれを潜るらしい。
ライオンは一回鼻を鳴らすとスタート位置になるのだろう場所に自ら移動して行った。


「お!準備万端だね!!それでは皆様!ご一緒に3秒数えましょう!……勿論練習しなくても大丈夫だよね!」


ユウが高らかに左手を上に挙げた。


「それでは!最後の演目です。ライオンのレオによる輪潜り。……さぁ!ご一緒に!」


両手を指揮棒の様に横に大きく振って上で揃える。


『さん、にー、いち、ぜろ!!』


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