「リュウ!何かありましたか?」


白雪が息を切らしながらリュウの側へ走ってきていた。その後ろをオビが付いてきている。リュウは特に不審にも思ってないのだろう、淡々と要件を伝える。


「外から来てる劇団の中で怪我人が出たって。白雪さんも来て」
「はい!……もしかして」


白雪は心当たりのある友人、ユウの顔を思い浮かべたのか青ざめていく。それを目敏く見ていたオビは安心させる様に首を左右に振る。


「あぁ、違う違う。……丁度今演ってる劇団らしいけど。大丈夫なのかね、舞台」
「さぁ。怪我人が居るって事しか言われてないから。どんな容態なのかも分からないよ」


リュウが先導する様に走り出すとその肩に何かが乗るのをオビ達は確認する。それはユウと居るであろうピトであった。


「何でこんな所に?」
「また迷子ですかね?」


何も知らないオビと白雪は不思議そうに首を傾げる。その様子に何かが納得いったのか、リュウは1人頷く。


「そっか。白雪さん達は知らなかったっけ。色々あってピトはうちで預かる事になったんだよ」
「…………え?」
「着いた。この話はまた後でね」


白雪が聞き返す間も無くリュウは劇団の所へさっさと入って行ってしまった。仕方なく白雪達も続く。


「失礼します、薬室の者です」


丁寧な言葉使いで白雪は部屋に入っていく。其処には2人の女性が痛めた足に負担が掛からないように座っていた。


「……取り敢えず、白雪さん。そっちの人の治療を任せるね」
「分かりました。とにかく患部を固定します!」







「あ!キキさんにミツヒデさん!」


ユウは見知った顔を見つけると慌てて2人の方へ寄る。


「ユウじゃないか!……凄い格好だな」
「あ、やっぱりそう思います?……凄いですよね」
「でも似合ってる。良いんじゃない?」


ユウは着替え終わっており、黒い服に所々ポイントとして白いレースやらが付いている、所謂、ゴスロリと言われる服を身に付けて居た。白い髪も惜しげも無く晒されており、既に人目を引いている。


「ユウは何で此処に?」
「舞台の感じの下見と、普通に見学です。学ぶ所は色んな所に転がり落ちてますし」
「ほ〜。勉強熱心だな」
「オビにも見習って欲しい」


オビの名前が出て少しユウは動揺したものの、キキ達は少しの変化を見逃してしまっていた。


「……そういえば、キキさん達は?」
「あぁ、怪我人で出たらしくて今白雪達が見てる。その間の待機」
「うわっ!それ大丈夫なんですか……。え、舞台上で??」
「違うみたい。裏方の方らしいけど」
「へぇ〜。……一応点検しといた方がいいかもな」


ミツヒデは2人の会話を聞きながらも舞台の方へ目を向けていた。首を傾げて、じっと舞台の上を見つめていると何かに気付いたかの様に慌てはじめる。


「き、キキ!!あの姫役の子って……!!」


釣られる様にキキとユウはミツヒデの言った通りに姫役の子に目を向けるとそれは見知った顔。どうやら白雪が出ているぽかった。


「……うそぉ…………白雪舞台デビューじゃん……って!!」


舞台の上から1人、騎士役の男性が降りてきたかと思うととうにも聞き慣れた声であった。ユウは確認する様に隣の2人を見つめると、ミツヒデは顔を覆っており、キキは無表情で騎士役を見つめていた。


「…………殿下も……」


側から見たら滑稽であろう。
何故なら3人並んで何とも言えない顔をしているのだから。

prev / back / next
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -