ガタガタと揺れる、馬車の荷台にユウはぼーっと座っていた。周りには大小様々な檻があり、その中には動物達が入っている。


「…………流石に暇だなぁ」


ふあぁぁ、と大きな欠伸を漏らしながら自分のすぐ横にある大きな檻に寄りかかる。
その檻の主は大きなたてがみを持つライオン。
普通の人ならおいそれと自分から寄りかかる真似なんてしないだろう。しかしユウはそれがさも当然かの様に寄りかかり、檻の主もそれが何時もの事かの様に反応1つ変えなかった。
異常とも言えるその光景。
それがユウにとっての通常だった。


「あ〜暇だなぁ。王城ウィスタルに入れるのに、こんな馬車乗ってなきゃいけないなんてさぁ」


ユウはルノマールというサーカス団に所属している。それはおよそ5年程前、16歳の時の頃からだった。
人目を引く白い髪、それに右が青、左が赤の虹彩移植症を持っていた。その異様な姿を見た人攫い達が食い付かない筈も無く、その標的にされてしまっていた。
そんな所をルノマールの団長に助けられた事がきっかけで、ユウの動物の言いたい事がなんとなく分かる能力を買われ、サーカス団に所属する事になったのだ。


「……何事?何事??」


大きく揺れたかと思うと馬車はゆっくりと止まる。不思議に思いながらユウが馬車から降りると、他の面子が乗っている馬車も近くに止まっていた。


「………え?本当に何事?」


ゆっくりと馬車の先頭へ足を向けると、其処には大きな門が立っていた。門の前には兵士が居て、団長が兵士と会話をしている様だった。
どうやら此処は、関所みたく、団長は紙を兵士に渡すと馬車の方へ戻って来る。団長が顔を上げると、ユウと目が合う。


「団長!!も、もしかして!!」
「そのもしかして、だよ」


どうやら長い馬車旅は、今日で終わり、クラリネス王国にやっと入れるらしい。


「…………ね、団長」
「駄目だ」


ユウが言う前に察したのか、団長は首を振る。ユウは予想はしていたのか、団長の服の裾を引っ張りどうにか「イエス」と言わせ様とする。


「そ、そんなぁ。ちょっとだけ!!ちゃんとフード被るし、眼帯も外さないからさぁ!!」
「それもそうだけど!!お前、絶対迷子になるだろ!!」
「なるかもしれないけど!!大丈夫!!クラリネスにいる鳥達に聞くからさぁ!!探検したーーーーい!!!!!」


うぐ、と団長は言葉に詰まる。それを好機と見てユウは詰め寄る。


「団長、お願い。クラリネスの雰囲気が知りたいの。ちゃんとウィスタル城に戻るから」
「…………ちゃんと、明るい時間に戻るんだぞ。分かったな」
「分かった、分かった、分かった!!やっほぅ!!」


それを聞くと、さっさと団長から離れて先程まで自分が乗っていた馬車を引く馬の近くに寄る。馬はユウの手に擦り寄ってくる。


「よーし、よし。今日まで良く頑張ったね。後ちょっとだから皆をよろしくね」


ユウは馬から手を離すと我先にと兵士の人に頭を下げて門を潜って行った。それを団長は呆れた様に見送ると馬に進む様、指示したのだった。

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