「……え?ユウ嬢に会えない?」


オビの目の前には団長が申し訳無さそうに頭を下げた。心配だったのかゼン達も後ろに付いていた。


「えぇ、すみません。何時もはこんな事無いんですけど、動物達がちょいと参ってしまってるみたいで。今日1日は誰も寄らない様にして欲しいらしく。すみません、殿下」
「いや、気にするな。確かに此処まで来るのに随分の長旅だったと聞いた。仕方無い事だろう。ではまた明日出直すとしよう」


ゼンは団長にそう告げるとミツヒデ達を連れてさっさと戻ってしまった。オビは恐る恐るゼンを見る。耐え切れなくなり、ゼンはオビに何だ、と聞く。


「いえ、もしかしたら〜もしかしたら〜俺の昨日の所為かなぁ〜と……。明らかに挙動不審だったじゃないですか〜」
「まぁ確かに嘘だと丸分かりだったな、あの人。嘘がつけないタイプなのは確実だろうな」


ミツヒデがオビに同意する様に頷いた。ゼンはただ前を向いて歩いている。オビはそんなゼンを不思議に思いながらも何も言わなかった。







「…………行った?」


ゼン達が歩いて行った後では団長が胸を抑えながら廊下を妖しく覗いていた。その様子を呆れた様に見ている専門医。


「行ったでしょうに。……で?ユウちゃん。本当に団長で良かったの?嘘だって丸分かりだったけど」


うん?と首を傾げながらユウは奥から出てくる。今まで隠れていたのであろう。


「あぁ、良いの良いの。嘘ついてるのが分かるから明日は本当の事を言ってもらう。そしたら殿下達も本当なんだな、って分かるでしょ」
「しっかし、会いたくない、ねぇ。何?恋でもしちゃったの?」


ユウはその問いに何も答えずに近くにあった椅子に腰を掛けて飲み物を手に取る。団長は落ち着いたのかふぅ、と息を吐いていた。


「殿下に嘘を吐くなんて……!!」
「あーはいはい。しょうがないでしょ、ウチのかわい子ちゃんのお願いなんだから」
「ごめんね、団長。ちゃんと言ってた通りに動物達の面倒を見るから嘘では無いよ。……盛っただけで」


ユウは心底申し訳無さそうに団長の前に飲み物を出す。団長が受け取ったのを見ると近くにあった大きな鞄を持ち、立ち上がった。


「それじゃ、私は1回リュウと白雪達の所に顔を出すから何か有ったら馬車の方によろしく」
「あいよ、行ってらっしゃい」


専門医から手を振られながらユウは部屋から出て行く。それから進む方向には薬室がある方角だった。
薬室にはオビが居る可能性がある。しかしリュウに頼みたい事があるので仕方がない。それは大きな鞄の中身の事であった。

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