オビが選んだのは薄い青緑色をした服であった。ユウはオビが決めた服に文句も言わずお会計をして「帰ろうか」と淡々と告げた。オビはその様子に毒気を抜かれて忘れる事にしたのだった。


「いやーにしてもユウ嬢、いい買いっぷりだったね」
「一気に買わないと長旅だから保たないんだよ。……そんな量をオビさんに部屋まで運んで貰って申し訳ない!」
「あぁ、もう吹っ切れてるね。申し訳ないって思ってないよね?」
「あはは、バレちった!」


まるで何も無かったかの様に2人はユウの部屋まで続く廊下を歩き続けていた。すれ違うメイドさん達は微笑ましそうに見て行く。


「お、よし。着いた!じゃあオビさん。此処までで良いよ。後は私がちょびちょびやるし」
「そっか。じゃあ中入って直ぐの所に置いておくね」


よっ、と言いながら丁寧に荷物を置いていく。置き終わると手をパンパンとならして部屋から出てくる。


「じゃ、ユウ嬢。俺は主の方に戻るから」


手を振りながら、今し方ユウと歩いてきた道を1人で戻る。ユウは黙ってオビの方を向いていた。口を開いて、閉じて、何かを告げようとしているものの顔を下に向けてしまう。しかし決心した様子でユウは顔を勢いよく上げた。


「オビさん!!」


オビは声に驚きながらも、立ち止まり振り向いてくれた。ユウはその様子に目を細める。


「……ごめんね、ありがとう」
「え?あ、ユウ嬢?」


オビは首を傾げながら問い掛けるものの、ユウは話はこれで終わりという様子で部屋に入って行ってしまった。


「……ごめんね、って荷物の事?…………律儀で照れ屋さんだなぁ」


ユウの新たな一面が見れてオビは腕を後ろで組みながら足取り軽く、また歩き始めた。明日は見れなかった動物を見せて貰おう、と思いながら。







「遅い!!!」


オビがゼンの待っている部屋に行くと開口一番に怒られてしまった。しかしオビは対して気にして無いようだ。


「いやぁ、主。女の買い物って時間がかかるもんですって」
「俺は、そういう事を言っているんじゃない!!ミツヒデ!!」
「あ〜はいはい。オビがユウと一緒に荷物運んでるのを俺が見たのが結構前で、ゼンは報告くらいしろ、とご立腹なんだよ」


やれやれ、と首を振りながらミツヒデはオビに説明する。木々は我関せずで、仕事をこなしている。


「え〜ちゃんと戻ってきたじゃないですか〜。ふらふらしてただけですって。主ったら心配症〜」
「あ〜もう、お前は!!この前白雪の事があったばかりだし、昨日も賊がユウ殿を襲っただろう。まぁユウ殿にはさっき会ったから無事だと分かったものの気が気でなかったんだぞ!」


ピタリ、とオビは今まで動かしていた体を止めた。ゼンはそんな様子を気にせず口を動かす。


「あぁ、そうだ。ユウ殿達を呼んだのは俺達だからオビを護衛に付けると言ったんだが断られたんだ。……お前何か失礼な事してないだろうな?」
「……えっ?いや、むしろこっちが沢山の荷物持たされたし服も選びましたけど」


至って不思議そうにオビはゼンに答えた。ゼンはその様子を見て「そうか」と側にある書類の確認を開始した。


「まぁお前がユウ殿に失礼な事をする様にも見えなかったし本当に護衛が要らないんだろうなぁ。……ん?服を選んだ?」
「えぇ。選んでくれ〜って言われて」


ゼンは持っていた書類を置き、椅子から立ち上がった。


「それだろ!!!絶対それだろ!!!お前、押し付けたんじゃないだろうな!」
「えぇ!?いや、いやいやいや。確かに文句も言われませんでしたけど、凄い似合ってる奴ですよ!?」
「んぐぐ……。オビ、お前一応明日確認しとけよ」
「はいはい。主の仰せのままに」


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