ピィピィ、とユウが探していたであろうピトがユウの肩に止まるのを確認すると離れている様に支持する。ピトは察しているのか白雪達の方へ寄るとリュウの頭の上に止まった。


「……え?」


リュウが両手を頭に触れようとするとピトはリュウの肩に止まり直す。まるでここが自分の定位置だ、と言わんばかりの様子だ。どういう事だと、ユウに聞こうと顔を向けると、1匹ならばさして気に留めない鳥の鳴き声が聞こえた。
が、一瞬の内にその鳴き声は重なりに重なり、大合唱の様に大きな音でユウの側に寄ってくる。その鳴き声の元はクラリネスでよく見られる鳥であった。
近くにいる白雪達でさえ、大きな音だと感じる為、ユウに取っては煩いと眉を潜める程だろう。その鳴き声が聞こえたのか慌ててガラクと八房、ヒダカが入ってくる。


「な、何事!?」


そして白雪達の方へ目線を向けると口を大きく開けて固まってしまう。
それもそうだろう。先程まで飛んで来ていた鳥達がユウの上に止まっていたり、周りをパタパタと飛んでいる異常な光景を見たのだから。


「お、お嬢さん!?これ、何!?」


オビも慌ててガラク達が入ってきた扉から入ってくる。その後を続く様にゼン達も入って来た。そして同様に異様な光景に口を大きく開けて固まるのだった。
暫くして、ユウがどうにか鳥達を帰した。疲れた様に、窓の方へ寄ってくると人数が増えており、それに口を大きく開けて固まって居るのだから「えっ!?」と叫んでしまったのも仕方ないだろう。


「ガラクさん達も?えっ!?殿下!?何で!!?」


だが直様思い当たったのだろう。いたたまれ無さそうに小さく謝った。ゆっくりとゼンが何とか口を開く事が出来た。


「ユウ殿、今のは、一体……?」
「えっと、その〜リュウの肩に乗ってる子を呼び戻す為に笛を鳴らしたのですが、笛の種類を近くにいる鳥を寄せる笛と間違えて鳴らしてしまいまして、今の様な事態に……。申し訳ありません、殿下」


ユウがゼンに向かって頭を下げると、リュウの肩に乗っていたピトはゼンの肩へと飛び移った。ゼンの頬へと自身の頭を擦り付ける。それはまるで、自分が悪いのだから怒るな、と媚を売っている様でもあった。


「い、いや。気にしなくていい。驚いただけだ。次からは気を付けてくれれば。………………あぁ、そうだ。街に出たいんだったな。昨日みたいな事がまたあったら困るし、オビを連れて行ってくれ」


話題を変えようとゼンはオビをユウの前へ突き出す。オビはふらつくこと無く立って見せた。ユウも話題を変えようと首をぶんぶんと上下に動かし了承した事を伝える。


「じゃあゼン、まだ仕事残ってるんだから戻るよ」
「またな、白雪、ユウ。オビ、頼むな」


木々とミツヒデがさっさと戻らなくてはとゼンを引っ張って部屋から出て行ってしまった。それを気にガラク達も部屋から出て行き、また部屋に静寂が戻る。


「それにしてもユウ嬢のあれ、凄かったね。……俺も出来る?」
「そりゃ笛さえ鳴らせればオビさんでも出来るけど、あれ、帰すの大変だよ。まぁ、1回顔合わせもしたからさっきよりは静かになるだろうけど」
「うーん。でもユウ嬢が居たら平気でしょ?暇な時やらせてよ」
「それなら大丈夫だろうけど。変わってるね」


オビはふふん、と鼻を鳴らしながら頭の後ろで腕を組む。ユウに対して最初に会った時よりも自然体になりつつあるのが白雪にも分かる。


「変わり者なもんで。主から許可も貰ったんで行きますか」
「そうですね、行きますか」


ユウとオビは気だるそうに白雪とリュウに手を振って薬室から後にしたのだった。

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