ピト。それはサーカス団において1番小さい綺麗な緑色をした鳥を指す。
小さい故に、新しい事に興味深々なのだろう、新しい場所に来るとあらまぁ不思議、居なくなってるのである。それを知ってからユウはなるべく来てから次の日に外に連れて行ってあげる様にしていた為、最近は無かったのだが。


「きっと昨日、フィーを私の部屋に連れてっちゃったからだよなぁ」


いくら良くなったとはいえ、フィーを近くに置いておいた方が良いと思ったユウはピトより先にフィーを外に出しっぱにした状況にしてしまったのだ。あの好奇心旺盛なピトがそれをおいそれと黙っている筈も無く、こうして逃げ出したのだろう。
薬草園には居なかったので、適当に歩いていると目線の先には目立つ赤髪が見えた。


「あ!白雪〜!!」


ユウが手を振りながら近付くと白雪は嬉しそうな笑顔で振り向く。


「ユウさん!!おはようございます!早いですね!」
「おはよう。まぁね、動物達の面倒見なきゃだし。……あ、そうだ、緑色の小っちゃい鳥見てない?」


ユウは両手を使って15p位の幅を作る。その幅はどうやらピトの大きさだろう。


「鳥……うーん、見てないと思います。今来たばっかりなので」
「そっか〜、見掛けたら私の所くる様に言って貰えるかな。逃げ出してさぁ」
「えっ!逃げ出したんですか!?」
「そうそう、探索大好きな子なのすっかり忘れてた。多分、城の中の自然豊かな所だとは思うんだけど、薬草園以外にそれっぽい所ある?」


昨日、街を見た時、ピトが好きそうな自然豊かな所は無かった為、城の中に居るのだろうという点までは分かるもの流石に広い。


「うーん…………あっ!森っぽい所ありますよ」
「あー。多分そこっぽいな。場所どこら辺?」


白雪が丁寧に真っ直ぐ行って、左に曲がって……と説明してくれるものの、行った事のない場所に対するユウの方向音痴さでは辿りつけないだろう。


「…………あーごめん、白雪。私軽く方向音痴だから行けそうにないや」
「じゃあ一緒に行きましょうか?」
「いや、白雪これから薬室に行くでしょ?別に急ぎじゃないからいいや。丁度薬室の方にも用事あったし」


白雪は申し訳無さそうに薬室の方へ向かい始める。ユウは大きな欠伸を1つ漏らして白雪の後を追いかける。


「あぁ、別に気にしなくて良いよ。もう少ししたら笛鳴らして呼び戻すから」
「へぇ、そんな事出来るんですね」
「まぁ賢い子だからね。ほら、何だっけ、ユリス島あるじゃん?」
「あ!確かに!」


そんな雑談をしながら2人は歩いていると薬室に到着する事が出来た。部屋の中から音が聞こえており、作業している事が分かる。


「リュウ、おはようございます」
「あ、白雪さん、おはよう。…………ユウさんもおはよう」
「おはよう、リュウ。約束通りに来たよ」


昨日、帰りに約束した事を律儀に早い時間から訪れたユウにリュウは嬉しそうにするものの、直ぐに無表情に戻す。


「ガラク室長に昨日みたいな事は控えなさい、って言われたからじろじろ見るのは止めるね。……嫌だったよね、ごめん」
「いやー慣れてるし、良いよ良いよ。まぁそうしてくれると有り難い。昨日みたいな感じだと動けないからねぇ。気にしないでいいよ」


ひらひらと手を振って気にしてない事を伝えるとリュウは安心したかの様にほっ、と息を吐いた。丁度その時、ユウ達が入って来た扉が開く。


「やっほーお嬢さん、リュウ坊。…………あ、ユウ嬢も居たんだ。おはよう」


開けた主は気怠そうに入って来て、ユウを見つけると不思議そうに挨拶をしてきた。


「オビさんおはよう。早起きだねぇ」
「いやいやいや。ユウ嬢、もう7時だから、主達も動き始めたし。……あ、そういえば此処に来る途中に珍しい鳥見たんだよね」


なんて事ない報告だが、ユウには1つ思い当たる節があった。


「オビさん、もしかしてそれってこんくらいの大きさで緑色だった?」
「ん?…………あー、確かにそんな感じしたかも。ユウ嬢も見たの?」
「いや、うちの子今脱走してて」


へー、と流したオビだったが、ん?と眉をひそめると慌ててユウの肩を揺さぶった。

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