CLAP

拍手ありがとうございます。
いつも励みになっています!
拍手御礼夢はただいま赤髪の白雪姫のみです。
お返事はMEMOにて。



ミツヒデ


「出てこい!!!!ミツヒデ!!!!この野郎!!」


大声を出しながら私は城の中を駆け回る。バタバタと大きな音が鳴ろうが構うもんか、と私はミツヒデが居そうな場所を手当たり次第に探す。
ッチ、と大きく舌打ちをすると走っていた足を止めて来た道を戻り始める。ゼンの所で待ち伏せてやる、と闘争心を燃やしながら私は廊下を歩く。
すれ違うメイドは引き攣った笑みを浮かべながらそそくさと通り去る。その反応に少し傷付きながらも、自分が今どんな顔をしているのか理解はしているので何も言わずに見ないふりをしていた。


「なんだ、なんだ。今回は何があったんだ?」


ゼンの執務室に着くと開口一番にそう聞かれた。呆れた様に頬杖をついて私が話すのを待っている。


「……私が大事にとってたプリンを食べた」
「………………そ、そうか」


凄くどうでも良さそうにゼンは頷いた。その様子に私はまた怒りがぶり返す。


「違うんだって!!普通のプリンなら買って返せで済むけどさ!!この間視察行った所の有名プリンで、数量限定なの!!しかも季節物だからもう売ってないんだって!!」


バン、とゼンの机を力強く叩く。その衝撃で少し紙が床に落ちてしまった。けど私はそれを気にする余裕が無い。


「しかもね!!私ちゃんと……」


さらに続けようとしている所で、ゼンが扉の方を向いて固まった。何事かと私も向きを変えようとしたらゼンが慌てて私の顔を固定する。その力は思ったより力強く、むぐぐ、と変な声を出しながら私はどうにかゼンの手から逃れようとするが、悲しいかな、男の力には勝てなかった。


「何さ」
「べ、別に何でもない!そ、それで何だ?ちゃんと何だ?聞いてやるから話せ」
「……何?どうでも良さそうだったのに。まぁ良いけど。話しにくいからこの手を離してよ」


私が顔を向ける様子が無いと察してか、ゼンは「あぁ」と返事をしながら手を離してくれる。
でも私はゼンのやりとりで後ろにいる人物が誰か分かってしまったのだ。ゼンが口パクで必死に「逃げろ」って言っているのをきちんと見てしまったのだ。


「名前書いてたのに食べたんだよ。……ね、ミツヒデ?」


へへへ、と全く笑っていない棒読みで後ろを振り返ると冷や汗を垂らしたミツヒデとミツヒデの左腕を掴んでいる木々が並んで立っていた。
どうやら木々がミツヒデを連れて来てくれた様だ。


「あはは……わ、悪かったって」
「はぁ?今?散々逃げ回って、捕まって、目の前に出されてから謝るの??違くない?普通最初に自分から謝りに来るもんでしょ?ねぇ?ミツヒデさん?」
「か、代わりの買って来るから、さ。ほら、怒るなよ」
「怒るなよ〜??目の前のお前が怒らせといて何様だ、この!アホ!!バカ!!ミツヒデ!!足を滑らして転べ!!イザナ殿下の前で転べ!!」


ふん、と鼻を鳴らしてゼンへと向き直る。ゼンは大きく肩を震わせて私の次の言葉を待っていた。


「今日は用事あるし休むから!」
「……え?仕事は?」
「ミツヒデがやるって!!」
「は、ちょっと待っ、」
「やるよね??」
「…………ハイ、ヨロンデ」


以上!と叫ぶと私は力強く扉を閉めてゼンの執務室を後にする。
ったく、とぶつくさ文句を言いながら自室へ寄り、大きな花束を抱えて今日行くべき場所へと足を進めるのだ。
今日は祖母の命日で、以前食べた美味しかったプリンを一緒に持って行こうと思っていたのに。
私ははぁ、と大きな溜め息を漏らしたのだった。







「……何時もよりイライラしてたな、あいつ…………」


ふぅ、と静かになった執務室でゼンは息を吐いた。止めていた訳では無いけれど、やっと呼吸が出来たかの様な疲れを体中から感じる。


「当たり前じゃんか。今日は大切な日なんだから」


さらり、と木々がミツヒデの机へ追加の仕事を乗せながら呟いた。ゼンとミツヒデがその続きを待つように口を閉じた。此処まで言って分からないのかと木々は大きく溜め息を吐く。


「あの子の祖母の命日だよ。……ついでに言うと、ミツヒデが食べたプリンを持ってこうとしてた。凄い美味しかったから向こうで食べて欲しいんだって」
「…………あ〜。もうそんな時期だったのか」
「………………ゼン、ちょっと空けて良いか?」
「……帰ってきたら仕事するんだぞ」


分かってる、投げ捨てる様にミツヒデがゼンへと告げると、ミツヒデは先程彼女が向かった方向へと急いで追い掛けて行った。


「……あいつら、本当に面倒くさいな」
「言葉足らずだよね。2人とも。相性は悪くないのに」
「それはお前もだからな?」


ゼンは深く溜め息を吐いてこの場に居ない2人分の書類仕事を見て「やるか」と呟くと、先程落とされた書類を拾った。



Back
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -