「数の割には大したことなかったな」
「寿命縮むかと思った…」
結局あの後、30分ほど車の群れと、銃弾が入り乱れる中さくらはひたすらジャックの後ろで怖さのあまり叫びまくり、ジャックは赤子でも扱うかのように、場を関係無しに凍らせ、近づいてきた敵は素手か近くにあったもので殴った。
そして粗方片付いた所で援軍が来る前にさっさとその場から逃げ、見事蛍から頼まれた荒仕事をこなしてみせたのだ。
「どうだサクラ、なかなか面白い街だろう?」
「個性豊かだけど怖いよ!あとなんで逃げた先がこんな高い屋根の上なの!?」
「眺めがいいからな。トリップ先で無かったか?こんな無法地帯」
「……あったけど、あんまり関係なかったな。自分で危ない所には行かなかったし」
「そうか。まぁ、それが当たり前か」
「うん」
会話の中でさくらに過ぎったのは様々なトリップ先と最後に故郷の世界。
屋根の上に座りながら街を見下ろし、何処か心ここに有らずの大人びた表情をする少女を自然とジャックは横目で見ていた。
「さて、まだホタルに会う時間まで時間があるし観光の続きでもするか」
「賛成!」
彼の言葉にぱぁっと表情を年齢相応の笑顔を見せるさくらに、『まだ知ることがありそうだ』とジャックは小さく笑い返した。
・・・・・・・
時間はあっという間に過ぎ、さくらはジャックに連れられある酒場へと着く。昼間に会った蛍が指定した店らしい。
何処か西部劇を連想させる内装の店内には、ジャックが言った様にいわゆる人外と言われる様々な種族が人間と交ざりながら、または一緒に酒を呑んでいた。
「やっほージャックとさくらちゃん!」
きょろきょろと見回すさくらの耳に、昼間聞いた声が入る。窓際の席に蛍と、あの時ヘルメットを被っていた少年が座っていた。