「昨日も言ったがここはとても治安が悪い。普通の国では暮らせないヤバい奴等が世界中から集まっている。まぁ、情勢の圧迫で仕事が潰れたり腕が良いのにやらかして流れ着いた奴等も多いな」
「そうなんだ…」
ホテルから出て真っ直ぐ大通りを歩いているさくらとジャック。土地慣れしている彼の説明を聴きながら、彼と離れることがない様に細心の注意を払っていた。
「うぅ…銃声が聞こえたり、すぐそこで殴り合いとかしてるけど皆気にしてないね…日常茶飯事なのかな」
「そうだな。だがサクラ、こんな無法地帯だがルールがあったりするぞ」
「あるの!?」
「まぁ言わなくてもいいか!どうせ異世界へ渡る俺らにとっては知らなくてもいいことだ」
大通りを歩きながらジャックはこの街の概要をさくらに教えた。
街の場所は今はあまり暑くないが、冬に雪は降らず、夏はとても蒸し暑い熱帯気候の地域に分類されていること、街への入り方は海か、街を囲んでいる森にある一つの道から。
世界からも無法地帯と認識されており、見て見ぬふりをされているなど…暫くの間、この故郷へ戻ってこられないのを惜しむかの様に語っていた。
「…でも、元はジャックは霜の妖精さんなんでしょ?なのになんでこんな暑いところに」
「寒いのは確かに好きだが、場所が好かんくてな。周りは俺を怖がって近寄らない。そんな所にいて何が楽しいんだ」
「確かに」
「そして長い時を生き、世界大戦にも暇潰しにちょっかいかけていたら国際的な人外指名手配になってしまった。トウレン達とは世界大戦の時に出逢ってな。付き合いはそこからだ」
懐かしみながら言うジャックは恐れられている人外と言われていてもさくらは人間に見えた。