「しっかし、さくらは本当に不思議だな」


さくらが琥珀に連れられて数分後、突然桃簾が呟く。藍晶と碧玉、黒玉はまだ残っている自分の仕事を片付けるために今さっき部屋から出たところだ。部屋に居るのは桃簾とジャック。桃簾の言葉に彼は小首を傾げた。


「確かに不思議だが、そこまで気にするか?」

「勿論。トリップって言ったら大変なモノだろう?ジャックみたいに限りなく人間に近い怪物とか…なんっつーかさ、そういう『何か大変なモノ』を持ってる奴って見た目や雰囲気で解るもんだ。でも、さくらにはそれが一切感じない。本当に、ただの中学生だ」


ふむ、とジャックは自身の顎に手を当てて考える。
確かに桃簾の言う通りだ。 自分は人間ではないが見た目は限りなく人間。水を操れるし身体能力も人間のそれを超えている。勘の良い者なら自分を見かけてすぐに正体が人外だと気づく。

だが彼女は、自分が主と決めた少女は平凡過ぎる。自分に自信が無いのはまだ仕方ないとして、存在が希薄だ。しかし、ジャックは1つ気になっていることがあった。

「運に左右されやすい」

「は?」


「サクラは、運に左右されやすいんだ。具体的なことは解らない。だが、サクラと会った時にそう感じた。思えトウレンが俺達を襲って来た時、あいつは転んだり怪我したりが多かった」

「運が悪いってことか?」

「かと思うがあいつは大して力も無いのに今まで夢渡りのトリップで生き延びてきた。運が悪いなら死んでる。山天狗もサクラを見て運に左右される体質を持っていると言っていた」


「そこが、普通の人間と違うところか…?」




「私が説明するわ」


唐突に部屋の中から聞こえる効き覚えのない声。扉の方へ目線を向けると艶のある長い黒髪に気立ての良い服を着こなす女性が立っていた。


「…んだ手前」


ナイフを取り出し身構える桃簾。しかし、ジャックが制止を掛けた。


「この女、サクラがいた世界の匂いがする」

「はぁ!?」

「その通りよ。初めまして、突然の訪問ごめんなさいね。私は心乃原と言います。さくらちゃんの故郷の世界の住人であり元神様の一人」


神と言う言葉にジャックは眉を潜め、すぐ一つの答えにたどり着いた。そうか、だから、


「何の用だ?」

「さくらちゃんはしばらくの間故郷へと帰って来られない。だから貴方達に彼女自身も気付いていない、彼女の秘密を教えるわ」




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