これは、一般人と怪物がトリップすることになった最初の話。
世界は無数にある。そしてこの世界は主に人間、その中に人外が混じって暮らしている、程よく混沌とした世界だ。
「む。ここにお前さんが遊びにくるとは久しいのぉ」
「最近、力の加減ができないから相談にきた」
この森は時間が止まった様に静かで、自然豊かなクセに生き物もいない。俺はあまり好きではないが、ここを何千年も守っている奴は面白い。何より古くからの友だ。
「最近、お前さんがちょいやりすぎる噂をよく聞いていたが、見る限り深刻なようじゃの」
「そうだろう?自分でもあ、これヤバイなって。しかし制御の仕方が解らん。千年以上生きて初めてのことだ」
「力を持ちすぎた人外は暴走させて死ぬのがオチじゃからな。しかし、回避する方法はあるぞ」
「?」
「契約者を見つけて自分の力を半分預かってもらうのじゃ」
「見つけ方は?」
「見つけたいと思っていれば何となくその者の居場所が解るらしいのぉ。自分と似ていて、自分より何かが強い者が主になるらしい。儂は力が安定してるからそんなの要らんがな」
ふふんと得意げにコイツは言う。仮面をつけているから目元の表情は見えないが、隠れていない口元は笑っている。羨ましいことこの上ない。だが、
「主か。面白いな」
「縛られるのが嫌いなお前がそんな事言うとは」
「逆に気になるではないか。この俺を従える者がどんな者だろうと。しかし、言われた通り探しているが、この世界にはいないな」
「それは大変じゃ!善は急げ。儂がお前さんの主がいる世界に渡らせようぞ」
「座標は…こんな感じだ」
「よし、ではいってこい。お前さんの主、わしも見るのが楽しみじゃ」
友が地面に空けた真っ暗な穴に落ちながら、俺はゆっくりと目を瞑る。久しぶりだ。こんなに気持ちが高揚とするのは。
「む。彼奴をあちらへ送ったのは良いが、あいつ等が黙ってないのぉ。説明するのがめんどいな」