「挨拶運動?」 「はい!風紀委員は明日から朝に校門の前で挨拶運動をするんです。それと同時に生徒の服装を確認したり。委員長、忘れないでくださいね」 「…解った」 面倒くさいな。と、風紀委員長のイヨは胸の中で呟いた。 ・・・・・・・・・ 翌日 「おはようございまーす」と校門の前で挨拶をする風紀委員の中で、イヨは眠たい目を擦りながら立っていた。もともと知らない生徒と話すのが苦手なイヨにとって挨拶運動は苦でしかない。 「委員長!しっかりやってくださいよ!」 「…む。すまない」 そう言いつつ再び眠たい目を擦って校門を背もたれにして立つ。 しかし暫くして別の方向から朝にそぐわない大きな声。風紀委員が誰かを叱咤している様に聞こえる。面倒くさいがこればっかりは委員長であるイヨも無視出来ない。 「どうしたんだ?」 なんとなく近くにいた風紀委員に事を訪ねる。 「あ〜ぁ。服装ですね。しかもなかなか引き下がらないみたいでややこしそう…」 「そうか」 「委員長、行ってきてくださいよ」 「は?」 「ガツンと、ね!!委員長なんですから」 「…………」 キラキラ向けられる自分への眼差しにをスルー出来るわけもなく、イヨは騒がしい場所へと向かった。 「…朝から煩いぞ」 「あっ!委員長!この一年生の服装が…」 「服装?」 横を見ると自分より少し背が高い男子生徒の制服を着崩している人物。イヨに負けないぐらい面倒くさそうにしてる 「服装がどうした?」 「注意してもなかなか…」 「お前が納得する返事がこないと」 「違います!そんな意地悪な言い方しなくたって良いじゃないですかー!」 「違うのか?」 「とにかく!委員長が注意してください!」 ため息をついてから再びイヨが振り向くと青い瞳が自分を見つめている。若干睨んでいる様にも見える瞳をイヨも少しだけ見つめ返して風紀委員に視線を変えた。 「これぐらいの服装だったら別に良いではないか」 「え?」 「全部を私服で統一してたら駄目だと思うがこれぐらいなら別に…服装で学校が悪くなるわけじゃないしな」 「しかし委員長!」 「しつこい」 ついにイラッときたイヨが低めの声で風紀委員を睨みつけると相手はびくっと固まり黙った。 「コイツが無抵抗な生徒を傷つけたり学校の雰囲気を乱す行為をしたならその時は私がなんとかする。これで良いだろう?」 「……あの…」 「さ、朝からそんなにデカイ声を出せるのなら私の分まであっちで挨拶運動の続きをしてこい。あと私にあれこれ言うなら私を推薦するのではなくお前が委員長に立候補すれば良かったんだ。とにかくさっさと行け。これ、委員長命令な」 小さく微笑をしつつイヨが「委員長命令って一度使って見たかったんだ」と言うとそのマイペースぶりに負けたのか呆れたのか、渋々と持ち場を変えた。 「…さて、風紀委員の一人がすまなかった。もう行って良いぞ」 「え、いや…なんというか大丈夫なんですか?あんなこと言って」 「委員長だから大丈夫だ。多分…そうだ。一応名前は訊いとかないとな。とりあえず委員の立場上、名前は訊かないといけないらしい。私はイヨだ」 「ソラ・ヒーレントです」 「ソラか…解った。いちいち手間をとらせてしまったな」 「じゃ、失礼します」 しかし学校に入ろうとしたソラを突然イヨが「あ、」っと言って何かを思い出した様に引き留めた。気だるそうに後ろを振り向く 「その格好をする理由は解らんが、お前も大変だな」 「…?はぁ…」 この言葉の意味を、ソラは玄関に入ったあたりで理解した。 ――――――――――― イヨは推薦で風紀委員長になったのでやる気がほとんどありません |