「なぁアゲハー今日って新しい教師来んだろ?」


気だるそうに体育教師の紲那が言う。
早朝なせいか眠たい様で、小さく欠伸をした

場所は三階にある二年生職員室。
まだ生徒が来るには少し早い時間帯だが既に何人かの教師がいた。


「はい。社会…でしたっけ。中でも歴史が得意な御方の様ですよ」


紲那の隣の席に座る白衣を着た国語教師のアゲハが落ち着いた丁寧な口調で返事をした。

四月といえば新入生だけではなく新任教師もやってくる。しかもこの学校は異能者と能力者が通う学校だ。もし生徒の異能や能力が暴走した場合はそれを教師が抑えなくてはいけない。普通の教師では出来ない仕事と言っても良い。

だからなんやかんや良いつつ教師達は新しく来る教師がどんなものだと楽しみにしている


「紲那、体育ではこれから何をするのですか」

「体力測定。やっぱりここの平均高いからな〜シャトルランとか余裕で150いく奴いるんじゃね?アゲハは?」

「学年によって違いますよ。詩だったり現代文だったり…あ、来ましたね」

「おっ」


アゲハが先に気配に気づくと静かに職員室の扉が開いた。

現れたのは金髪にメッシュを入れた端正な、端正過ぎると言っても良いぐらい顔の人。


「二年生の職員室ってここ?」

「おう!初めましてか。俺は体育を教えてる紲那だ。宜しくな!」

「私は国語担当のアゲハです。宜しくお願い致します。性別解らないと言われますがとりあえず、男です」

「俺はツバサね。あ、敬語はいいよ」


ツバサの言葉にもともと敬語を使うのが苦手な紲那は置いて、アゲハは不思議そうに首を傾げる


「俺はどんな人にも敬語使わないし。ただ教師っていう職業で教える側なだけだから」

「成る程、確かに貴方の言う通りな気がしますが…私はこの敬語が板についてしまいまして、タメ口は出来ません。口調が敬語なので。すみませんねぇ」

「あーたまにいるよね。なら仕方ないか」

「小難しい話はよく解んねぇが…」

「小難しくありませんよ」

「俺にとっちゃ小難しいんだ。そろそろ生徒が来る時間だから準備しようぜ。新任早々に悪いがツバサもな」


赤々しい瞳で見ながらにやり、と紲那は口元を緩めてツバサに言う。ツバサも紲那の独特な雰囲気に苦笑しながら「解ってるよ」と言った。














・・・・・・・・・・・・

放課後の帰り道。

紲那とイヨはばったり会って一緒に帰っていた。学校内の二人は教師と生徒だが、実は家が正面にあるという超近所でイヨは小さい頃から紲那にお世話になっていて、家族に近い間柄でもある。


「ってわけで、新任でツバサって奴が来たんだよ」

「変な奴だな」

「明日は三年生の授業多いからイヨの教室にも来るんじゃねぇの?」

「…あんまり興味ないな」

「なかなか面白い奴だぜ。イヨって歴史好きだろ?」

「人の話を聞け!!」

「痛い!」

「紲那は教師だろう?もう少し人の話を聞くことを覚えろ!」


言葉をスルーして喋る紲那に、イヨは彼の足をローファーで思いっきり踏みつけた。暫く紲那は片足を引きずる様に歩くはめになる



「なんだろ今の」


そしてたまたま離れたところにいたツバサは二人の後ろ姿を目撃した。遠くからなので何を話してるかは解らなかったが明るい栗色の髪をした女子生徒が紲那の足を踏みつけたところを見てしまった。





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