慌ただしい入学の季節が終わり新入生も学校に慣れ始めた頃、毎年恒例の行事がやってくる。


「この学校の球技大会ってどんな感じなの?」

「んー。そりゃ普通のだな」

「いやいや、普通ではないでしょう」


ふと、疑問に思ったツバサが紲那に訊ねるもその問にアゲハが苦笑混じりに答える。

今の時間は六時間目のホームルーム中。今まさに生徒達は球技大会の話し合いをしているが、進行は体育委員が行っているので担任たちは職員室で各々作業をしていた。


「簡単に言ってしまえば能力、異能を使う球技大会ですね。毎年盛り上がってますよー」

「勉強や手合わせだけじゃ自分の力をフルに発揮できねぇしな。その意味合いも込めてってことだっけ?」

「はい。まぁ、張り切りすぎて力を暴走させる人がよく出ますが…そこは教師の頑張り所って感じです」

「へぇ。面白そうだね」


ツバサが笑みを浮かべる中、紲那はため息をついた。


「破壊の能力使うのめんどいなー。あれ使うとすっげー腹減る」

「ふふっ頼りにしてますよ」

「あれ、紲那ってもう一つ能力持ってたの?」


「おう。破壊ってのな。文字通り、何でも壊す能力だから学校では暴走した能力、異能、魔術、あと召喚術を強制終了させるのによく使ってる」

「球技大会は暴走する生徒が多いですからねぇ。紲那にとって最も忙しい二日間です」

「頑張ってね」

「あのな、お前らも働け」






・・・・・・・・・・・・・

場所は変わって3Bの教室。三年生になって手馴れた作業だったので、20分も時間があまってしまい生徒たちは教室内で自由にしていた。


「イヨは何の球技出るコトにしたー?」


「よいしょ」と、イヨの前の空いている席に座り、椅子を後ろにして彼女の方を見ながら十闇が訊いた。


「私はドッチボールとバレーだ。お前は?」

「オレもドッチやるよ。あとはソフトボール」

「毎年思うんだが、移動の能力を持っているお前なんか無敵過ぎるだろ」

「いやいや、そんなことないって。何回か負けてるでしょ?」

「む。確かに」


チョコの菓子を開けつつ納得したようにイヨは言った。いくら移動の能力も持っていてもそれを遮る能力は異能はある。相手の力を分析して対策するのは当たり前だ。次のホームルームでもその話し合いをするだろう。


「今回もイヨもう一つの能力を使う羽目になるのかな?」


冗談半分で言った十闇をイヨはいつかのツバサに見せたぐらいの目つきで睨んだ。


「…お前、学校でその話はするな」

「あはは、そんなに睨まないでよー」


十闇が言っている能力はイヨのもう一つの能力『封印』のことだ。イヨは止めたい、封じたいと思った全てのモノを消すことができる。紲那の『破壊』と対になる能力。バレるとややこしいのでイヨはこの能力を隠している。


「私の試合相手が暴走率高いから咄嗟に使ってしまうんだ。相手が悪い」

「拗ねないの!…あ、他のクラスもだいたい決まったみたい」


天井…つまり上の二年生がいる三回を見上げながら愉快そうに言う。
十闇が種族の関係で人の心が読める。それを知っているのは指で数える程の者だ。


「鈴芽と紅はバレー、鈴見と蒼はバスケ。ドッチボールは皆参加するみたいだね」

「学年関係なく対戦組まれるからな。楽しみだ」

「同じく!」




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