「宜しくな!」


笑顔で握手に応じ、日暗は差し出された手を握り返す。それからナイトという女性が向かい側のソファーに座った。


「いやー。今回は俺の我儘に応えてくれてこの組織には本当に感謝してる」

「こっちも珍しいお客さんに興味津々だから」

「…そういえば、ここって4つの部に分かれてんだよな?アンタは何処に所属してんだ?言えないなら無理にとは言わねぇけど」

「いいえ、大丈夫。私は暗殺部よ。ちなみにボス補佐」

「……ボス補佐?」


さらりと言ったナイトの言葉に日暗はつい訊き返す。


「そう」

「そんな偉い人がなぁ…びっくりだ。俺の想像なんだが、ボス補佐ってのはボスと一緒なんじゃないのか?一人でなんて、」

「勘が良いのね、ボス補佐はボスと行動を共にするの。つまり、暗殺部のボスが貴方に会いたいと言ってたわ」

「ボスさんがねー…何処にいるんだ?見当たらないけど」


不思議そうに辺りを見回す日暗にナイトはクスクスと面白そうに微笑む。


「いるわよ」

「え?」

「やぁ」


「……………え?」


突然聞こえる渋い声に、日暗は誰にと限らず再び訊き返す。目の前には女性のナイトしかいないが、明らかに彼女の方向から聞こえてきた。他にあるとしたら、小さな人形。「もしや」と日暗は勘づく


「…人形が、ウノさん?」

「いかにも。おはよう」

「………………………。」


ウノの見た目ははシングやミルミから教えてもらったことからは予想出来ない姿だったし、普通人形だとは思わない。それはいくら何でも日暗だって同じこと。しかも自分の前に二人目のボスとそのボス補佐がいるんだから驚きは隠せない。
じーっと観察しつつ驚いている日暗を見ながら「はっはっは」とウノは笑った。




「……すげー。人形が喋った!」


しかし日暗の瞳は驚きから好奇心で輝く。自身の異能でふよふよと浮いているウノを、今さっきとは違う眼差しで見つめた。


「君は自分の感情に素直なんだな」

「素直じゃないと楽しめないだろ?すげー!人形の中に……魂が入ってんのか?浮いているのは貴方の異能かな?人形の状態でも使えるのか…。こっちには魂を食ったり若干操れる種族の奴等がいるしきっと可能だよな。正直言って、ミルミちゃんから暗殺部のボスで『能力者を越えた能力者』って聞いてたからもうちょい厳ついイメージだったんだが…異能者がいるここは本当に面白い。あ、悪い!喋ると止まらないんだよなー、俺。特にこういうコトに関して」


照れくさそうに栗色の頭を掻きながら日暗が言うとウノはまた笑う。気さくそうな人だなと照れながらも日暗は思った。


「こちらこそ、能力者の来客は滅多にないことだからな。この建物内では君は結構興味の的だぞ?」

「そんなにか?確かに研究部の人には気を付けろって言われたな。何されるのか考えただけで怖ぇよ。諜報のボスさんも雰囲気掴みづらいし…いや、解らないのが普通だよな。何せボスだ」

「それはそうだなぁ」




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