「そうだなー。まず俺が2つ持っていて、今回はその内1つしか使う予定はない。だから現状では1つしか教えられないってコトで良いか」


二口分ほど水の入っているガラス製のコップの縁を指でなぞりながら、周りの視線と騒音の大きさ、そしてもし気づかれたらの場合を考えて日暗はあえて『能力』と言う言葉を使わない。彼の前置きにシングは頷く。


「今回使う予定なのは業火っていうやつだ。簡単に言ったら燃やすモノだな」

「火炎系のモノなのか?」

「ただの火じゃねぇよ。平たく言えば俺が消したいと望むモノ全てを燃やす火だ。これの前には火の弱点とされる水も効かない。勿論、その気になれば目に見えない術式だって燃やせる。その術式の全てを理解してからの話だけどなー」


全くもってややこしい力なんだよな。と、日暗は最後に付け足す。強力そうな能力上に何かしらの代償はあるのだろうとシングはすぐに察した。それに気づいたのか更に日暗は話を続ける。


「今回は大型トラック二台分だからそんなに疲れねぇよ。まぁ俺はあくまで二人の付き添い的な感じだからな、シングくんとミルミちゃんが指示するまで勝手に使う気はない。はい、何か質問は?」

「何でも燃やすのなら武器以外の物も燃やしてしまうのですか?それはそれで任務で支障が出るかもしれません」

「ミルミちゃんからの質問とか珍しいな。俺、嬉しい!問題ないぜ。なんなら今見せてやるよ」


異能者狩りをするこの地域で、しかもこんな人混みの中なのに余裕の持った態度で日暗は笑う。すこし周りに気を配ってから、日暗はグラスの中の水に視線をやり、縁に指を一本乗せた。シングとミルミはそれを黙って見る。すると水はあっという間に蒸発。二口分しかないので大して入っていない水が蒸発したなど誰も気づいていない。


「と、まぁこんな感じかな。グラス触ってみ」

「…熱くないし溶けてないな」

「俺が望むモノを燃やすからな。昔は制御するの大変だったが、今はお手の物!さて、これを踏まえて今回の革命…じゃなかった。任務の作戦はどうする?」


耳に着けていたヘッドフォンを首に下げて日暗は問いかけた。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -