「あ、イヨ?突然の電話悪いな〜。今さ、俺、異能者が住んでる国に来てるんよ」


一時的にツバサと別れ、日暗は若干暗くなってきた街中を散策しながら何となくイヨに電話を掛けた。


『は?』

「だからー、異能者の国!すげぇよ。魔術と異能が混ざってたりさ、人間はそれを楽しそうに眺めてたり…俺等が住んでる世界とは大違いだ」

『そうか。…兄貴はそこにいて幸せか?その世界が羨ましいか?』


電話越しに若干不安そうな妹の声を聞く。珍しいなと思いつつ、日暗は小さく笑う。


「んーん。興味はあるが、住みたいとか思わないな。お前らと居た方がずっと楽しい。つかイヨ、寂しいのか?可愛いなぁ」

『なわけないだろう。じゃあ切るぞ』

「お土産楽しみにしてろよー。なんか美味いの持ってくから。じゃ!」


携帯を切って日暗は再び辺りを見回す。自分達の世界とは全く違う共存した世界は、ただ歩いているだけでも面白い。ヘッドフォンを耳にはめてても日暗には充分過ぎるぐらいの音が聴こえていた。


「そういえば、雪国に行くんだっけ。なんか上着買おうかなー。金もちゃんとこっちのに変えて貰ったし。寒いのとかあんま感じないけどっと」


誰に話すことなく日暗は呟くと、足に力を入れて高く跳躍。あっという間に建物の上に着くとその上を歩いた。跳んだ時に人の視線とざわめきを感じたが、何も返事がないのを確認すると改めて新鮮な気持ちになる。


「こっちならすぐ軍の奴が来るのにそんなコトないんだな〜。さ、もう少し散策すっか」


心底楽しそうに日暗は笑うと再び歩き出した。

















・・・・・・・・・・・・・


それから二時間して日暗は建物へ帰って来た。
しかし帰って来ても何処に行けば良いか解らないので玄関付近をうろうろしていた。


「…あ、」


そんな時にいつか見かけた二人を見つけ、日暗は近づいた。「久しぶりだな!」と言われた二人――シングとミルミは不意を突かれて驚いた様な顔をする。


「シングくんと、女の子の方はミルミちゃんって言うんだっけ?もう名前聞いたかも知れんが俺は日暗。宜しくな〜」

「あぁ、此方こそ宜しく」

「宜しくお願いします」

「で、今日はどうすりゃ良いんだろ、俺」




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テーマ「人外ファンタジー」
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