昼休み、売店近くでイヨと鈴芽は偶然会った。


「……はぁ…あ、鈴芽」

「……はぁ…あ、イヨ」


「…どーした?」

「菓子を没収された。鈴芽は?」

「俺も没収されて売店行くつもり」

「私もだ。風紀委員長なのに持ってきすぎだど」

「俺は普通なのに没収された」


と、更に大きくため息をつく二人。誰もが認める甘党のイヨと大食いな鈴芽にとって菓子を没収されるということは、死活問題に並みに深刻なことだった。


「あ、イヨさん!」

「?」


そんな時に聞き覚えがある明るい透き通った声がイヨ呼び、振り向かせる。そこにはシドレがいた。知り合ってからというもの偶然あったら抱きつこうとしたり写真を撮ろうとしてくる彼女に、触られるのが苦手なイヨは若干警戒する


「シドレ?」

「そんなに警戒しないでくださいよ!」


「何の用だ?」

「先程、調理室を貸して頂いて、簡単なお菓子を作ったのでイヨさんにお裾分けしようと思いまして!ちなみに、チョコビスです」

「そ、そんな…本当に…?」

「はいっ!…って、わっ」


ぱぁっと笑顔で答えるシドレに思わずイヨは抱きついた。後ろで餌付けされてるみたいだな…と思いながら眺める。


「イヨさんから抱きついてくださるとは…!」

「シドレ大好きだぞ!ありがとう!」

「いえいえそんな!…はっ…これは百合に見えるのでは…!?」


絞め殺すぐらいの力でイヨはシドレに抱きついて、少し離れたところで鈴芽は『餌付けされてるみたいだな…』と眺めながら思っていた。しかしふと携帯の待受画面を見ると昼休みが終わろうとする時間になっていて、面倒くさいが彼女を呼ぶ。


「イヨー。そろそろ昼休み終わるぞ」

「む、そうか…シドレ、この礼は近いうちに必ず」

「そんな別に…!あぁ、そちらの方も良ければ…」

「良いのか?」

「はい。ただし近づかないでください。お手数お掛けしますが…イヨさん、あの方にも」

「解った」


「では!」と花のような可憐な笑顔でシドレは去る。イヨはシドレに手渡された鈴芽の分の菓子を本人に渡した。




「イヨの知り合いか?なんか…色んな意味ですげぇ奴だな。お礼しないと」

「しかしいい奴だぞ」

「菓子貰ったから?」


「逢った時からだ」



そう言ってイヨは丁寧に菓子が入った袋を開けて、中に入っている一口サイズのチョコビスを一つ食べた。





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