「んー、なかなか激しく戦闘してるな。中で3つ、外で一つ…まぁ関係ないけど」 一方、viceと異能者達が戦闘を繰り広げている中、日暗は軍の情報収集をせっせと行っていた。朝早くから潜入していたため軍服(もちろん盗ったモノだ)を着ていた。 「戦闘のお陰で部屋はもぬけの殻だからやりやすいけど…一人ぐらいは残しとけよってなー」 「おい」 コピーの終了を告げる音が鳴ってメモリーカードを内ポケットに仕舞うと同時に聞こえた少年の声に日暗は「うひょっ」っとわざとらしく驚いた様な声を出した。 振り向くと扉の前には少年…シングの他に、隣には少女…ミルミがいた。 「…女の子だけなら良かったのに」 「何か言いましたか?」 「なーんも!まぁそんなに警戒すんなってお二方。先に言っとくぜ、そっちがなにもしない限り俺はなにもしないから安心しろよ」 軍服のポケットに手を入れ机の上に座って日暗がいう。その飄々とした読めない雰囲気に未だ警戒しつつもシングが口を開く。 「お前はあの革命組織の一員か?」 「違うな。でも、別の革命組織に所属してる。ってかその隊長です」 「目的は?」 「見ての通り情報収集。たまたまあっちの革命と被ってさ、そっちに気が引かれてやりやすかった。あんたらもここに来たってコトは司令官の護衛のついでに情報収集だろ?いや、こっちが本命だったり」 「…その通りだ」 「だったら戦う必要はねぇな!良かった良かった。俺はやるコトやったし後はお好きにどうぞ」 「助けなくて良いのか?同じ能力者なんだろう?」 素直なシングの問いに、日暗は「解ってないな〜」と大袈裟に答え、せっかく仕舞ったメモリーカードを取りだし掌で弄ぶ。 「革命組織はな、情報の共有はたまにするが基本見て見ぬふり、互いに干渉しないんだ。でもそうだな…今回の革命、そっち側で言うと襲撃か?これは革命組織側の勝ちで終わるかな」 手を顎にあて、考える様な仕草をする日暗に、シングは眉を潜め訊き返す。 「どういう意味だ…?」 「革命組織はいつも本気でやってる。今回の場合、これが失敗すると能力者の集落が一つ無くなるかも知れないからな。でもそっちは情報収集が本命で革命組織を潰すのは二の次だし…さて、ここで俺から一つ提案がある」 一つ、と指をたてて日暗は絶対敵には見せないであろう明るい、しかし何か企んでいる様な笑みを見せた。 「この戦い、革命組織側が勝つとするとただ軍の情報を持って帰っただけじゃ今一つ足りないだろ?だからまぁ、アレだ。あんたらにとって近くて遠い存在の能力者の特徴とか教えてやるよ。軍の情報なら幾らでも得られるが、能力者の情報はなかなか得られない貴重なモノだろう?」 「その代わり?」 「さっすが鋭いな。俺も個人的に異能者ってどんなモノか知りたいんだ。だから、互いに嘘をつかず情報交換しようぜってコト!でもなぁ…その前にちょっとお願いがあるんよ」 そう言って困った様に軍の帽子を脱いで栗色の髪を掻きながら日暗はある方向を指差す。シングとミルミは最初彼が何を差しているのか解らなかったが、数秒後に気づいて再び警戒体制に入る。 「だからそんなに警戒すんなって!俺はただ、遠くから俺らを視ている奴の視線を少しずらしてほしいってだけ。視られると緊張して上手く話せないからさー」 遠くから視ている奴と言うのは当然アイのことだ。どうやってか知らないが、日暗はアイの存在を前々から察知していたのだ。 「それは無理だ。他のところも視なければいけないからな」 「やっぱり?なら仕方ないか…声も誰かに聴かれてる気がするが、異能ってヤツか?不思議だな!じゃあ話を戻して、情報交換しようぜ?信用のために俺から話してやるよ」 そして日暗は一方的に長々と話始める。 「まず革命組織な。少し前までは結構あったんだが軍の掃討作戦で現在は3つしかない。組織名は言えないが、いまあんたらと戦ってるところは七人、ここにはいない革命組織の中でも古株と呼ばれてるところは五人、そして俺が隊長を勤めている組織は…三人だ」 「三人、ですか?貴方を含めて?」 「…三人です」 「それは組織と言え…「言える!一応言えるんだっての!そんな目で見るなよ悲しくなるから!」…解った」 「よし。能力者の特徴って言ったら身体能力と治癒力が人間より高いってコトと、そっちと同じ様な特殊能力を一、二個持ってるな。一番良く知られてるのは不老長寿ってコト。見た目は十代後半でストップするし、病気や大きな怪我しなけりゃ生きてられるが…差別とかで殺されたりして平均寿命は人間より低かったりする。ちなみに俺は260歳ぐらい。あと、能力者は成長の仕方が不安定で100年近くガキの姿のままだったりするコトもあるな。…っとざっとこんなもんだ」 話しながら日暗はそろそろイヨ達の組織の革命は終わるか、もし目の前の二人が話し終えた時に攻撃した場合どうするかなどを考えていたが、彼が話し終えても二人が攻撃してこなかったため胸の中で安堵していた。 「さぁ次はお二方の番だな。話せるコトだけ話してくれ」 |