「ってわけで、次の任務は俺が単独で情報盗んでこようと思ってんだよなー」 とある国の宿屋の部屋。日暗の部屋に革命組織『影狼』のメンバー…と言ってもイザヨイとラグナだけという隊長の日暗をいれても三人という少人数だが全員が集まった。 「ってわけってどこから繋げたんデスか」 「ノリだよノリ」 「私とラグナ殿は本当に何もしなくて宜しいのですか?」 「あぁ。とある政府の情報を盗むだけだからすぐ終わるし。お前等は宿で待機な」 「ハイデス!」 「了解です!」 「あ、あと一つ。大事なコトを訊き忘れてた」 真剣な趣になる日暗に、ついラグナとイザヨイも自然と背筋を伸ばした。 「潜入捜査だからさ、紛れるのに軍服着た方が良いかなーって。少し早めに行って軍の中見学したいし、すげぇ悩んでるんだよな…」 「もちろん軍服着てくだサイ!紛れやすいですし。あと個人的に日暗サンもたまにはきっちりした服を着るべきデス!」 「そうです。用心に越したことはありませぬよ!あと形から頑張ってください!雰囲気は大切です!」 「だよな〜。じゃあそうしよっと。なんか面白いコト起きそうだし、二人の言う通り用心に越したことはない」 面白いコトの意味が理解出来ずに二人は互いに顔を見合わせた。それを見て日暗は屈託のない笑顔で答える。 「勘だよ勘。それに、やるなら何事も楽しまないとだろう?」 ・・・・・・・・・・・ 「二日後、軍の司令部を壊滅させるから」 いつもの様に集まって、紅が今回の革命の説明をする。部屋には別の革命でいない鈴芽と華蓮以外のメンバーが揃っていた。 「なんで壊滅させるんだ?」 「この軍がさ、近々僕ら側の能力者の集落を潰そうとしてるんだよね。だからその前にどうにかしないとでしょ?」 僕ら側、と言うのは遠い昔から差別に遭っている能力者の方だ。しかし世界には異能者と人間が共存している国もいくつかある。世界は半分に分かれている様なモノだが異能者も能力者も、その世界が広すぎるせいか双方の詳しいことは知らない。 「どんな感じにやるのー?」 中性的な容姿の十闇が訊く。自分が寝る直前に説明が始まったからか髪が束ねられてなく、余計に女性っぽく見えている。 「鈴芽と華蓮はまた別の任務に行ってもらうから、その他でやるよ。まず焔羅は能力上、外で行動してもらう。あと僕は遠くで指示を出すから戦えないな」 「お前の重力操作で建物ごと潰されたらたまらないからな」 「そんなに能力使うの下手じゃねぇよ!」 「イヨ、焔羅、騒がない。で、建物内での配置を最上階から言うと…イヨが最上階、十闇が最上階から二つ下の階、蒼が一番下、つまり一階だね」 「何で空いてる階があるんスか?」 「人数が少ないって問題もあるけど、イヨは最上階から順に壊滅させて下に、蒼は逆に一階から順に壊滅させて上に、十闇は自分の担当の階が終わったら状況に応じてどっちかの援護ってコト。指揮官が何処にいるのか解らないのもあるけどなるべく軍の戦力を減らしたいから」 「解った」 「細かいことは当日に言うよ」 ―――――――――――――― 「…って説明されたけど、オレよく解んなかったや。どっちに援護行けばいいのかなー?」 当日、軍から大分離れたところに集まって革命開始の時刻まで待機している時、十闇が呟いた。 「お前は魂感知が出来るだろう?それで判断しろ。何処かに思わぬ敵がいるかも知れんからな」 「はぁい。解ったよ、イヨ」 「そろそろ時間か、紅」 焔羅が紅に呼び掛けると、いつものスーツ姿ではない身軽な服装の紅は辺りを見渡してから話す。 「作戦はこの前話した通りだよ。強いて言えば指揮官は必ず殺してね。兵は殺してもいいけどトラウマ植え付けるぐらいの半殺し程度で良いよ。とにかく、気絶させるか戦意喪失させて」 「トラウマ植え付けるとかえげつねぇ言い方すんなよ…」 「…あれ?」 「十闇?」 「ちょ、ちょっと待って」 難しい説明に興味がない十闇が、ふと革命する建物がある方角を向くと、何かを感じとった。もっと細かく感じられる様に目を閉じて数秒集中する。 「やっぱり、普通の人間じゃない奴がいる。魔術士でも能力者でもないから、異能者って奴かな?手強そう。あと人間よりは美味そう」 「喰うなよ。それが本当なら恐らく雇われたあちら側の者か。面倒だな」 「でも、もし遇ったら強行突破ッスよね?」 「うん。じゃあ時間だ。十闇、『移動』の準備は出来た?」 「一度にオレを含めて四人も別々の場所に移動させるのは難しいけど…大丈夫だよ。いつでもオッケー!」 「解った。配置についたら各々始めてね。皆、頑張って」 「行くよー。3、2、1!」 シュッと言う相変わらず風を斬る様な音を発てて十闇は自分も含めて紅以外を移動させた。そして、一秒もせずに着いた建物内で武器を構えて、お馴染みの言葉を小さく呟いた。「革命開始」と |