夏休みも終わりが近づいて来て、でもまだまだ暑い今日この頃。

私達四人はいつもの様にだらだらと人が居ない寮の広い談話室で表向き勉強会と言う名でだらだらと過ごしていた。


この高校に入ってから私達は何故かつるむ様になったんだけども幼なじみに近いぐらい私達は仲が良いのかもと思っていたりもしている。




「大丈夫?」

「暑いー…うちわ、うちわ貸せー…プリーズうちわフォウミー」


すっかりバテているボサボサ黒髪の双子の大人しい方に私が訊くと、若干怪しい英文でテーブルにうつ伏せになりながら手探りで隣に居る同じ血が繋がっている人物、要するに双子な片割れが持っているうちわを取ろうとした。



「ウッセェな!俺だって暑ぃんだよ。うちわは俺様のモンだ。売店で買ってこい」


バシッと容赦無く彼は片割れの手をはたき、バテている片割れは最後に…いや最期に「ケチ…」と言って力尽きた。



「死んじゃダメだよー。頑張ってあの子が戻ってくるまで生きててよー。あの子がかき氷持って帰ってくるから」

「は?」


そう言って来たのは力尽きた奴ではなく片割れを力尽かせた奴。


「部活終わったらお土産として皆にかき氷買ってくるからね!って言ってた。ほら、だから生きててー」

「……うー…」


彼はうめき声を上げただけでまた力尽きた。
全くため息ついちゃうよ…


「ったくアンタ兄ちゃんなんでしょ?何でこんなにか弱い弟に優しくしてあげられないの!?」

「双子だから兄とか弟とかあまり関係ねぇし!つか気持ち悪ィぜ色々と!」

「関係あるわよ!もうその髪暑苦しいわね…バリカンで剃ってあげようか!?」

「やれるモンならやってみやがれ!」


ガタッと短気で気が荒い双子の兄が椅子から立ち上がる


「やってやるわよ!」


つられて私も立ち上がる。
この暑さのせいかみんな頭の沸点が低くなってる。それは私も同じ。



「丸刈りにしてやるぜ!」

「角刈りにしてやるわ!」


燃え上がる私達、間には力尽きた弟


「みんなー!たーだいまぁっ!かき氷だよっ」



「かき氷っ!!!!」



私達が燃え上がる中、部活が終わり、友達がかき氷片手に戻ってくると『かき氷』と言う単語を聞き力尽きた弟のHPが一時的に一気に回復、そしていち速くかき氷を持ったあの子に近づいてかき氷を受け取った。
それがめっちゃなついたラブラドールとかゴールデンレトリバーとかの大型犬の様に見えるのは私だけなのかな?





「かき氷うまー…やっぱアンタ親切、大好き」


かき氷を食べながらHPが完全に回復した片割れの弟がお礼を言う。私と乱暴な片割れの兄もかき氷を貰って、いつの間にかケンカ熱は冷めていた


「えへへーでも私には本命いるから」

「知ってる。」

「えっと…確か体育科にいる人だったよね?」

「うん!体育科のエースだよ〜。明日一緒に出かけるんだ」

「アイツか。俺知ってる、暑苦しくてウゼェ肩ぐらいの茶髪の奴だろ?」

「ウザくない!かき氷代徴収するよ?」


そう彼女が言うと双子の兄の方は最後にケッと言って再びかき氷をしゃりしゃり食べ始めた。


そんな時だった、彼等がやって来たのは



かき氷を食べていたらまた扉が開く。
まぁこの部屋は皆で使うから誰が来ても大したことじゃない


でも来たのは偶然にもあの人だった。




「だからなんで俺が宿題を見せないといけないんだい?弟に見せるならまだしもさぁ」

「わぁい!ホント兄貴が兄貴で良かった!」

「別に良いじゃねぇかよ。減るモンじゃねぇし」

「落ち着きなよー。確かに減るモノじゃないけどねっ」

「………ったく…」



入って来た四人を一瞥して乱暴な片割れの兄はウルサェ奴らが来たと嫌そうな顔をして、弟はそれよりもかき氷に夢中だった。

だけど私と、私の彼氏持ちの友達は違う



入って来た四人はこっちの双子とは大違いな仲がよさそうな多分アルビノなのかな?小麦色みたいな、くすんだ茶髪の双子と肩ぐらいの茶髪の男…もしかしてあの子の彼氏?実際あの人もこっちを見て少し呆然としてるし


そして、四人目は……海岸で逢った長い黒髪の男の人だった。






「あ、久しぶりだね!」

「う、うん。」


私が話し掛ける前に彼が気がついてくれて、逆に彼から話しかけてくれた。



「もしかしてあの人が前言ってた人?」

「うん。ね、あの肩ぐらいの長さの髪の人が彼氏?」

「だよっ!ちょっと行ってくるね!」



ぱたぱたと愛らしくあの子は彼氏の元へ行き話しかけた。話している内容は解らないけどとても楽しそうで幸せそうに見えた。いつもあの子は明るくて元気で毎日エンジョイしてるけど今のあの子はもっと人生をエンジョイしている様に見えた。

ちょっと、羨ましい…かなぁなんて考えちゃったりする。


まぁそんなことは置いといて、そうだ!あの人にあれ渡さないと…
そう思って、今度は私が彼に話しかけた


「ねぇ、この前撮った写真…現像したんだけどいる?アンタが写ってるのもあるし一応聞いてみたんだけど…」

「ホント!?欲しいなぁ…あ、俺が写ってるのは別に良いよ。恥ずかしいし」

「じゃあそれも持ってくる。ちょっと来て」


「写真部屋にあるんだ」と付け足して言うと彼は持ってくるの言葉に対して苦笑しながら「うわ鬼畜〜」と言いつつ私の後ろから着いてきてくれた




ちなみにこの時の双子's達は…



「君兄貴ならもうちょっと弟に優しくしてあげなよ」

「テメェみたくはできねぇよ。気持ち悪ィし」

「気持ち悪くないよ!弟として嬉しいよ、宿題みせてくれるしうちわ用意してくれるし」

「だってさオニーチャン。もっと俺に優しくしてくれよー」


「………テメェ等…っ」


乱暴な兄がキレるまであと五秒。






















「はい」

「ありがとう!」



彼を部屋の前に待たせて、すぐ自室の引き出しから前もって渡せるように封筒に入れ準備していたモノを出してすぐ彼に渡した。今回の現像は自分でも上手く出来た方だと思う。




「海綺麗だなー…あ、俺写ってるヤツだ。カッコつけてるみたい」

「そうかな?結構絵になってると思うよ?」

「ハハッ何それー。にしても写真綺麗だな…写真撮るの好きなの?」


「うん。成人したら色んなところ周りたいな…」


世界遺産とか穴場スポットとか…綺麗な風景や壮大な風景を写真に納めたい。忘れないように


「そう言えば、君どこの学科選考してるの?」


そんなことを思っていたら彼が話題を変えてきた。話す話題が無かったから丁度良い



「保育科だよ。」

「子供好きなんだ。」


関心関心と彼は言ってきて、ちょっと照れくさくなる。


「いや…ただ子供が好きなだけだよ。下に妹いるし」

「兄弟いるんだ〜」

「正確には大学一年生の兄ちゃん一人と小学三年生の妹が一人ね」

「俺も兄貴いるよ。同じ大学一年生」

「そうなんだ…もしかしたら同じ大学かもね」

「かもねー」






それから暫くの間、彼は私が撮った数十枚の写真を見て、私はそれが終わるまで開いた大きな窓から外を眺めていた






「「そういえば…」」


「あ、」

「あ…」
写真を見終わった彼と言葉がハモってしまう。恥ずかしい…


「えと、先にどうぞ」

「いやいや君からで」

「いーからアンタからっ!」


私が大声で言うと彼は押し負けた。よし、勝った。勝ってやった!



「…えっと…名前、訊いてなかったから」


彼の言葉に私は驚く。だって


「私もそれ訊こうとしてた…」


「ホント?」

「う、うん。」



彼が「考えてること同じだったね。」と笑いながら言う。私もつられて笑ってしまった。
そりゃもう二人で大笑い。



「あー面白い…どうせなら同時に名前も言っちゃおうか?」

「ハハハッ本当面白いね、賛成。」


「「せーのっ」」












「俺の名前は――――――――」

「私の名前は――――――――」






彼と一緒に自分の名前を言う。

その時ふわっとあの海辺で感じた様な優しい風が吹いて、















良かったな。

って風に混じって誰かの声が聞こえた様な気がした。








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