現在、私は夏休み中です。

私が通っている高校は寮生で外出する時は校章の入ったバッチを服のどこかに着けなければいけないけど、それ以外は至って普通な寮高校


そんな私は夏休みを利用して、前から何故か惹かれるモノがあって行ってみたいなと思っていた海をバスを何個も乗り継ぎをして見に来ました




「やっと着いた!!」


約六時間の長いバスの旅の末、やっと着いた名もない海岸沿いでぐぅっと背伸びをして海を眺める


空も雲一つなくて、地平線で空と海がくっついている様に見えた。

そして私は風景をパシャパシャ写真に撮っていたら、ちょっと不思議な体験をしたのです。






『えっと、次は…あ、あっち!』


パシャッ


「あ、…」


やっちゃった…
私と同じ海岸を眺めていた人も写真に写っちゃった…

長い黒髪の人で絵になるなぁ…私茶髪だから羨ましい…でも消さないと


「ん?」


そう思ってカメラを操作していたら黒髪の人がこっちに近づいてきた

よく見れば男の人だ……!



「あ、ごめんなさい。撮ってたら写っちゃって…失礼でしたよね…すぐ消しますから!」

「いや別に気にしてないから大丈夫だよ!ただその…何処かで会ったことあるかなぁって」

「え?」


「ほら、寮バッチ。同じでしょ」


ね!と言いながら男の人は胸に着けている小さな寮バッチを見せてくれた



「さて君は何でここに来たの?」

「何となくです。あなたは?」

「敬語はやめてよ、俺高2なんだけど…多分君も高2でしょ?バッチって学年で色違うから」

「本当だ…なら敬語は使わない」

「ありがとう。なら俺がここに来た理由を話すね。君と同じ何となく…って言ったらかっこいいんだろうけど生憎アイツ等の付き添いなんだよねー」


苦笑しながら男の人は右を指差て言う。
私もつられてその方向を見ると数人がサーフィンをしたりビーチバレーをしていた。



「あの中に友達が三人程いるんだけどソイツ等に誘われちゃって…まぁその三人も他の奴等に誘われた口なんだけど」

「じゃあ戻った方が良いんじゃないの?」

「だって動くの嫌だから。」

「そっか」



「じゃあちょっと暇潰しに歴史の話を聞いてくれるかい?」

「歴史?」

「俺、歴史学を選考してるから色々詳しいよー。この海岸付近の歴史もちょっと知ってる」

「ここに何かあるの?」







「あるある。ここはね、昔ある人達が拠点としていた所の近くなんだよ」


「ある人?」



「何故かは解らないけど世界に抗った人達が居たらしいんだ。その人達の一部がここら辺を拠点としていたんだって」



どこか重たい、神妙な口調で話す男の人につられて知らず知らずの内に少しだけど真剣に聴く様になった


「世界に抗った…?」

「そ、何をどう抗ったのかは解らないけど抗って良くも悪くも自分達の意思を貫き通した素晴らしい人達だなぁって俺は思ってるんだ」

「確かに、凄いね…その人達はどうなったの?」


「それは誰にも解らない。
これが本当ならその人達の望んだ世界になったかもしれないしなってないのかもしれない。
それすら解らないんだ。
この文献だってもしかしたら神話的なものかもしれないし、別の世界…パラレルワールド的なものかもしれないしある一人の人間の妄想かもしれないからね」


「そっかぁ…もし、その人達が本当に居たとしたらどれぐらい前の出来事なの?」

「1000年前…とかじゃあきかないね。数えるのが不可能な程、もっともっと昔の話だよ」



「そっか………………」


ざぁざぁと聞いていて心地よい波の音が私の耳に入る

暫くの間、二人でそれを聴いていた。














「その人達は…」

「?」

「その人達は、今も何処かにいると思う?」


ふいに思ったことを私は男の人に訊いてみた。
すると男の人はにこりと綺麗な笑顔を浮かべて海を見ながら言った。



「どうだろう、そのままずっと生きていてもおかしくは無い。
でももしかしたら、何かに生まれ変わって違う人生を歩んでいるもかもね。」

「それが、幸せな人生だと良いなぁ」

「生まれ変わるにも色々あるし、その人達にとっての幸せもそれぞれだけどね〜」

「でも、平和に暮らして幸せだと良いなぁって私は思うよ」

「俺も同じかな」






じゃあ俺、そろそろ行かないと。
と言って男の人は友達の所へ戻った。
私もバスの時間があるので最後に一枚写真を撮ってまた六時間バスに揺られて寮に戻りました。

















「――――ってことがあったんだ!」

「良いなぁ!何かロマンチック!」


その翌日、私は寮の部屋で友達三人に昨日の不思議な出来事を話した。


「つか歴史学って…あまり人気ねぇのに珍しい奴だな」

「どーせ頭だけ良い変な奴だろ」


「何言ってんの!きっと素敵な人だよ!!」


肩ぐらいの黒髪で毛先を跳ねさせながら明るく元気いっぱいに言う私の女友達と面倒くさそうにボサボサ黒髪を一つに束ねて、そっくりだけど微妙に目の色が違う双子の男友達二人が会話しているのを私はクスクス笑いながら見ていた。


「もう!そんなにクスクスしないでよー」

「ゴメンゴメン、面白くって」

「俺的には片道六時間してまで海を見に行ったアンタの方が面白ぇがな」

「六時間バスに揺られるとか俺も耐えられねぇな、やっぱりテメェは変だぜ」



「こういう時に双子って息合うよね。変でも別に良いよ。」

「にしても今日暑いねー四人でジュース買いに行こうよ!」

「そうしよっか」



背中まで伸ばしている自分でも結構長いなと思っている髪を払いながら私が立つのを背が小さい肩ぐらいの髪の友達がじぃっと見てきた。



「どうしたの?」

「そんなに髪伸ばして暑くないのかなぁって。この双子は別としてね」


「「クセ毛ヒデェんだから仕方ねぇだろうが!!」」


「はいはい知ってますー。ねぇ私ぐらいにバッサリ切っちゃえば?」


席を立ってニコニコ笑いながら友達は片手をチョキのポーズにする。

けど、ゴメンね。




「私は私だから、この髪型気に入ってるんだ。」





そう私が言ったら友達はちぇーっと可愛らしく顔をぷくっと膨らませて、仕方ないかと諦めた。

そして双子の落ち着いている方がさっさと買いにいくぜと言ってちょっと乱暴な方は置いてくぜと言って席を立つ







あの人達はどうなったのかな。
と少し思いながら私は四人でジュースを買いに行った。




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