嘘はついてない 「おっ!セレス達、結構早めにアンデットと会えたな!」 場所は変わって観客席。 今まで椅子に深く座っていた三沢だったが少し前のめりになりつつ面白そうに画面を見ていた。 「…今年の試験内容は意地悪だな。なにがアンデット300体だ」 その隣の椅子に落ち着いて座っている鵺だが怪訝そうに眉を潜めている。 「まぁな〜」 「アンデットは異界洞窟で死んだ者の死体に、死んだ異界生物の魂が入って生まれ、それ等が300体近くの大郡で行動するモノだ。だがそれは地下3階までの話。地下4階からはまるで別世界だ。徘徊している異界生物の強さも計り知れない。故に一体一体が弱いアンデットは300体の大郡で行動するのではなく…約600体の超郡で行動している」 「つまりセレス達は300体殺っても残りの300も殺らないといけねぇ。あんな超郡から逃げるのは不可能だからな。骨が折れるな」 ・・・・・・・・・ 地下4階 「ちょ、多すぎ!!」 「300以上いるよな?これ!!」 三沢と鵺がそんな話をしている間、セレスとクラトスは約600体もいるアンデットの群れの相手をしていた。しかも離れたところで魔術を展開しているエルーを守りながらだ。 アンデットは目が悪い。だから余程のことがなければエルーに気づくことはない。 そのことも含めて、セレスとクラトスはエルーから離れながら相手をしている。 「エルーは…!?」 戦いながら、セレスは後ろを見る。離れたところでエルーはとてつもない集中をしながら膝をつき、杖を地面に立てて媒介数個を地面にばらまき詠唱をしていた。 セレスが見た限り、今回はアンデットの弱点の火炎系で広範囲の中級魔術だ。普通なら五分は掛かる魔術だが、エルーを取り巻く歳に似合わない魔力と詠唱を聴いた限りあと数十秒で終わるだろう。 「どうだ!?」 「あと数十秒ってとこ…あ!!右掻い潜られた!!エルーのことバレたっぽい!」 「本当、数だけは無駄に多いな!!」 ダンッと音を発て、クラトスは地面にヒビが入る程の勢いで駆け、一瞬でエルーの存在に気づいたアンデットの一群の前に出る。 そして、右手で棍を握り、下斜めに構えた。 |