「ただいまー」


夕方、なんとか時間に間に合った僕は明日の試験のために買ったモノが入った紙袋を抱えながら、高級住宅街にある三沢の家もといクラン『カラオケボックス』に戻ってきた。…このクランの名前、ふざけた名前だよねホント


「お、おかえりなさいセレス!」

「おかえりー」

「ただいま、エルー」

「え、俺は?」

「いたんだクラトス。気づかなかったー」

「棒読みだぜセレスさん」


そう言ったクラトスも仕返しと言わん限りの棒読みで返してきて、イラッときた。クラトスのくせになにやってんだよってね。
クラトスは女性恐怖症だけど僕は自分でも解るぐらい中性的だし性別すら教えてない。それ以前にもし僕が女だとしてもクランに属してるからエルーやアーシェの様に慣れてくれるだろう。コイツが苦手なのは初対面の女だ。


「エルーとクラトスも帰ってきたばっかりでしょう?手を洗って来たら?」

「はーい」

「は、はいっ」

「はい」


噂をすれば白い髪に濃い灰色のメッシュ、斜めに切り込みを入れた様に左右の髪の長さが違う特徴的な髪型のアーシェが包丁片手に玄関にやってきた。ミコトの妹らしいけどすごい大人っぽい。そんなことより今は正直言ってその片手に握ってる包丁をどうにかしてもらいたい。エルーもクラトスも少し固まってるからさ、ね?アーシェさん。気づけ。得意気に包丁を片手で回さないでください。


――――――――――


「セレス、なにを買ったんですか?」


手を洗いながらエルーが丁寧な口調で話しかけてきた。
家がデカイせいか洗面所もデカイ。
蛇口は一つしかないから順番で使うけど、余裕で三人同時に手を洗える。


「明日の試験で使うやつ。召喚の媒介とか。結構高額な媒介たくさん買っちゃった」

「わ、私と同じだね!頑張りましょう!三人で!」

「三人…まぁ仕方ないか」

「さっきから俺はどうなってんだ?どんな扱いなんだ?なぁ」


手を洗って、一旦二人と離れてから荷物をクランに入ってすぐに三沢に貸してもらった部屋に置いてリビングに入るとなんとまぁ豪華でした。料理はアーシェが作ったとして、飾り付けなんかされちゃって。もしかして…三沢と鵺が…?うわっ…や、嬉しいんだけどさ…ね?

今さっき来たばかりであろうエルーとクラトスも驚いていた。



「よー!三人供お帰り。きちんと買い物してきたか?」


そして指定席とも言っては過言ではないぐらい毎回会うたびに三人がけのソファーに深く座っているこのクランのボス。三ヶ月前僕をこのクランに入れさせたボス。外出時はきちんとした服装なのに、そりゃここはアンタの家だけど人かいるのにTシャツにジーパンっていうラフな格好なボス。この『カラオケボックス』の創立者でリーダー…つまりクランマスターの三沢の明るい声がリビングに響いた。






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