エサリナ無統治自由国の首都、タチーニャの東にある高級住宅街。その中でも結構な敷地を持つある家に、ある二人がいた。



「そろそろ夕方だなー」

「……」


のほほんとした雰囲気を纏いながら、Tシャツにジーパンというラフな格好でソファーにゆったりと座りながら言う真っ黒な短髪の男に、窓際に立ちながら一回だけ頷いて返事を返す顔に小さな切り傷がある無表情な男。


「あ、鵺なんか言ったか?」

「…言ってない」

「おっ!今喋った!!俺な〜1日1回は鵺を喋らせるっていうマイブームが…」

「俺は自分でも言葉は少ない…と思っているが1日1回以上は絶対喋っているぞ」


鵺と言われた男性が夕焼けに染まってきた空を目を細めながら見て言う。無表情なせいか睨んでいる様に見えるが本人は何かを睨んでいる気はさらさらない。


「はーやく帰ってこねぇかなアイツ等!試験前のパーティーだしな〜」

「手伝いするんだぞ。クランマスターの三沢」

「そんな責任押し付ける様なかっちょいい言い方すんなよ!クランマスターとか!いやマスターだけどな!?くっソファーが!俺の邪魔を!」


ソファーに深く座りすぎたせいでバランスがとれない三沢は少しジタバタしながらなんとか座り直した。


「ふぅ…じゃあ準備すっかー!飾り付け飾り付け!鵺はアレ、わっかなわっか」

「楽しそうだな。まぁセレスやエルーが入ってきたし…」

「クラトスもやっと鵺のお許しを得て試験に受けれるしなぁ?」


にやりと口元を緩ませながら三沢が言うと鵺はくるりと向きを変え、長い藍色の髪を靡かせから今度は人一人殺せそうな目付きで睨んだ。


「んな睨むなって」

「…俺だって一昨年の試験をクラトスに受けさせたかったが一昨年受けたミコトとアーシェとは正直言ってクラトスは本気を出せない。だからと言って去年、エルーと二人で受けさせるのは心持たなかった。アイツ等は才能の塊だがまだ完全に開花していないしな」

「そこに丁度良くセレスが入って来てくれたもんな〜この3ヶ月でセレスは凄い強くなった。ありゃ最高のチームワークを出せるぜ。安心だ」


まだニヤニヤしながら口を緩める三沢を鵺を一瞥して、足音を殆ど発てずに何処かへ向かう。


「何処行くんだ?」

「…折り紙」

「は?」

「俺はわっかを作るんだろう?」

「お前こそノリノリじゃねぇか」





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