「あ、ありがとうございました」



エサリナ無統治自由国の首都、タチーニャにある魔術士通り。そこは魔術士しか入れない店しかなく、そのせいか通りには数多に複雑な陣が張り巡らされ魔術士にしか入れない通りになっている。

そして今、その通りにある店から出、普通の大通りに出てきた水色の髪を二つに束ね、髪と同じ水色の瞳を持つ少女は辺りを見回し誰かを探していた。


「エルー、こっちだぜ」

「あ、クラトス!」


その彼女をエルーと呼び、エルーと呼ばれた少女は振り向くと黒髪の少年に駆け寄った。


「ごめん…ま、待たせちゃって…」

「別に良いって、明日『試験』だし準備万端にしとかないとな」

「クラトスは買い物しないの?」

「エルーが魔術士通りで買い物してる間に俺は武器通り行って原西さんのとこ行って来た」

「原西さんのお店開いてたの?毎週木曜日しか開いてないのに…」

「明日はエサリナのビックイベントだからな。参加者も多いし、今日は武器屋は良い稼ぎ出来るから特別って言ってた。…それよりエルー」

「ど、どうしたのクラトス、具合悪そう…」


突然、口を手で抑えて気持ち悪そうにするクラトスに、エルーは急いで何故か背中を擦る。


「やっぱり魔術士通りが近いせいか女多い…気持ち悪くなるのは恐怖症の前触れだ…アンタは慣れてるから平気だけど…」

「な、なら早く帰らないと!待ち合わせの時間あるしっ!」


「うん、帰ろーぜ…カラオケボックスに」


まだ口を手で抑えながらクラトスは弱々しく言った。





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