※永倉さまのBAD ENDの続きです。 ※本来コラボ企画は双方の本編に関係ない企画ですが続きを書きたくなっちゃいました。 ※永倉さまのSSSのネタバレになってるのでSSSの第二部まで読むことをオススメします。 ※またviceの0.3章までのネタバレにもなっております 差し出された紅茶を飲まなくちゃと思ってても身体が動かせなかった。 もう『私』に対しての身体のガタが来たのか。と思ったが違う。今、言われた真実に衝撃を受けているんだ。 「自殺したのか、アイツ」 誰もいない広い広い応接室でアイツの死因を呟いてみた。涙は出ない。なぜかな?解らない。でもこの感情は、あのときと似ているんだ。紲那が昏睡状態になったときと、『彼女』の家族が死んでしまったときと似ている。…私は悲しいのかな?いや、悲しいじゃ済まされない様な気がする。最近、記憶があやふやになるせいか感情の名前すらも解りにくいときがある。 「…ツバサ」 そう呟いても、誰も応えてはくれない 無意識に、いつか彼にやられたフォークで刺された手を撫でてみるが傷跡は残っていない。でもあのときに刺された時の痛みと抱きしめられた感覚はきちんと覚えていた。 まだ彼の記憶は残っている。 ツバサがみせた笑みも、意地悪そうな声も、優しい声も、自分に触ってくれた感触もまだ覚えている。 暫くしてからイヨはずっとこの部屋にいることは迷惑かなと思い部屋を出るとリャクが言っていた通り、部屋の前には馴染みのある三人が待っていた。 「待たせてしまってすまないな。少し…いや、かなり驚いてしまった」 「…リャク様から全て教えてもらったんですね」 「あぁ、『教えてくれてありがとう御座いました』と伝えといてくれ。何も知らないで、変にはぐらかされるよりずっと良かった。それと、『紅茶を残してしまい申し訳ありませんでした』と」 真っ直ぐと澄んだオレンジ色の瞳でシドレを見つめながら言ったイヨは最後に小さくどこか切なそうに口元を緩めた。 「大丈夫…とは言えないな。だってツバサと会うことは私にとってすっかり日常の一部だったんだ。なんか、胸に穴が空いた様な感じがする」 本当は私が先に消えるかと思ってたのに。でも私が先に消えてしまったらツバサもこんな気持ちになるのかな。一瞬考えてみたが答えは出ないし、出たとしても良い答えではないだろう。 タイミングよく、なぜか涙が出そうになってきた。でも、きっと泣けない。 「イヨさん、あの…」 少し涙腺が緩み、イヨの瞳が濡れてきた。でも緩んでいるのに何故か泣けないのをイヨ自身が知っている。 しかしそれを知らず、涙腺が緩んだことに早く気づいたシドレは声を掛けようとしたが彼女がそれを遮った。 「明日から連続で任務があるから暫くは遊びに来られない。落ち着いたら連絡するよ。その時はシドレが作った菓子を食べたいな」 そう言って、イヨは建物を出ていった。 「そっか、ツバサが死んじゃったんだ」 事の全貌を聞いた十闇がイヨの隣に座って呟く。 基地に戻ってきてから十闇がイヨの部屋に入ってきた時に、イヨはツバサが死んだことを十闇に話した。 「よく解らないんだ。これは悲しいじゃ済まされない気持ちなんだ。なのに涙が出てこない」 「…涙が出なくても、心の底からツバサを愛しているからイヨは悲しいじゃ済まされないって思ってるんだよ。そんなに思ってくれてるなんて、ツバサは幸せ者かもね」 「イヨ、君は一人でも独りでもないよ。オレ等はツバサの代わりにはなれないけど背中にはオレがいるし、周りには皆いるんだから。イヨはイヨでいる限り、彼のことを忘れなければ良いんだ。彼への想いも」 長い言葉を二つに区切って十闇は話し、イヨの頭を撫で、席を立った。 「じゃあイヨ、オレは戻るね。えっと、明日の任務は無理だったら別に…」 「大丈夫だよ。任務はきちんとやる」 「…解った」 彼女の表情を十闇は覗こうとしたが、彼女の長い髪が邪魔をして見えなかった。 パタンッと扉が閉じる音がイヨの耳に入るとイヨは疲れた様にソファーに身を任せる。眠たくなってきて、目をこすった。 「…まだ今日は寝たくないんだよ」 イヨは自分の記憶を蝕む何かに向かって言う。そしてイヨを寝かせようとした。 私はそれを必死に拒んだ。今日だけは、まだ寝たくない。今寝たら夢かと思ってしまうかもしれない。ツバサは死んだ。これは事実だ。まだ完全に受け入れて、前に進むコトは難しいが、事実なんだ。 『彼女』も私の気持ちを察してかなんとかしようとしてくれてる。 「ツバサ、ありがとう…さようなら」 ―――――――― 最後の言葉は実はイヨの方のBAD ENDでイヨが最後に言いたかった言葉だったりかもしれなかったり。 十闇が言った背中はオレ、周りには皆。で隣にいるべき人はツバサくんだって言いたかったり。 イヨはこれからいつかツバサくんにフォークで刺された手を撫でるのを癖になったり。 とかだったら良いね。そうなれ! |